ヒトサラマガジンとは RSS

「東京よんなな酒場」 #2 | 北の味覚にとろける | 大塚【北海道料理 三平】

「よんなな」とは全国の都道府県の数を表す言葉。日本の郷土料理をおいしいお酒とハートフルなもてなしとともにいただける酒場。東京にあるそんな店を“東京よんなな酒場”として紹介していきます。今回は、大塚駅の南口側にある、北海道の郷土料理の酒場です。

アプリで見る

最近、大塚、という街が好きになりました。

軒先に暖簾をかけた小規模の店が多く、なんとなく酒飲みにやさしい。池袋から一つ隣であるにもかかわらず、日中の人通りはまばらだし、日が暮れれば、今夜はどこで飲もうかと迷えるオジサマが街にさまよい出ては暖簾の奥へと姿を消していく。

それを見ていると、あれよといとも簡単に、自分も暖簾の奥へと誘われてしまうんですよね。

そんな調子で、またいい酒場に出会いました。

暖簾の奥にある、大塚のリトル北海道【三平】

    看板の「北海道料理」という言葉に惹かれ、初めて訪れたのは去年の冬。以来、何度かお邪魔しました。

もうね。入った瞬間から雰囲気がいい。旅先で入る店の空気に似た感じというか……。北海道に、こんな店がありそう! って気分になれるんです。「よんなな酒場」の記事で紹介するお店は、ちょっと国内旅行に近い気分に味わえるのがとてもいいと思っています。

ということで今回、改めて【三平】に取材でお伺いしてきました。

カキに白子、カニ、いくら、
刺身にザンギ、石狩鍋にじゃがバター……

    手書きのメニューはその時期のおすすめ料理

来る度にいろいろなものを注文しましたが、ほんっとに、どの料理も主役になれるほどおいしい。

大ぶりな仙鳳趾産のカキは海のエキスが凝縮された旨みの塊、『じゃがバター』はもはや"ジャガイモのトロ"と呼びたくなるおいしさだし、石狩鍋は一人前1,500円で絶品なのに二人で食べても大満足の量が出てくる……。

どれも北海道から届く食材ばかりで、「こんなにおいしいのにこの値段でいいの!?」って言いたくなるような魚介が惜しげもなくばんばん使われています。

まずは、『白子ポンズ』から

    『白子ポンズ』(800円)は、「飲む白子」と命名。プチン、と外膜が弾けた瞬間に、ジュースのようなとろける甘味が口の中に広がる。

好物、というのもありますが、毎度頼んでしまうのがこの『白子ポンズ』。こんなにミルキーな白子を、私はほかに知りません。今回も真っ先に、瓶ビールとともに注文。すぐに出てきて、他の料理を待っている間に食べられるのもいいんですよね。

しかし、こうも魅力的なメニューが多いと、毎度目移りしてしまうので、人気の料理は何か、とズバリ大将の佐藤さんにたずねてみました。

「刺身、そして入荷次第ですが変わりダネの魚の鍋、それから『サケちゃんちゃんやき』も人気がありますよ」との情報。そういえば、『ちゃんちゃんやき』は今まで頼んだことがない。まして、外食で食べたことがない。ちゃんちゃん、ってなんだ?かわいいけど。

北海道らしい名物料理ということなので、今回は『サケちゃんちゃんやき』で飲みます。

幸せになれる『ちゃんちゃん焼き』

    『サケちゃんちゃんやき』(850円)。

ジュージューと音を立ててやってくる、熱々の鉄板。まずは、サケの身をほぐすことを意識しながら、味噌がからむように全体を混ぜていきます。といっても、ほぐしすぎず、サケの身がしっかり感じられるくらいがベスト。

  • こうして、サケをあらわにしたら…

  • このくらいがベスト! だと思います……

野菜とサケを一緒に口に運ぶと、火が通った野菜特有の甘味、そして脂がしっかりのったサケがうまい。脂が甘い。全体によくからんだ味噌が甘辛くて、お酒のすすみもばっちり。

温かい野菜とサケを食べ、鼻水をすすりながら、冷たいビールグラスを傾けると、じんわりと幸福感がこみ上げてきます。

えーと、『サケちゃんちゃんやき』が850円で、瓶ビールが530円だろ……。みなさん、1,500円あれば大塚で幸せになれますよ!

北海道の味覚を、熱燗で楽しむ

さて、続いては、これからの季節においしい嬉しい、熱燗によく合う料理を紹介して(注文して)いきます。

    『飯寿し』(650円)は、北海道の冬の風物詩ともいえる郷土料理で、米麹と魚と野菜を樽に漬け込んだ「なれずし」のようなもの。身がキュッと締まって、しっかりとした噛み応えがありさっぱり。三平では、サケ、ハタハタ、ニシンの3種類。

    サケの刺身を凍らせた『ルイベ』(800円)。そのままでももちろんおいしいが、熱燗と合わせて食べるのがおすすめ。凍った刺身が熱燗で口の中で溶ける瞬間、鯛茶漬けのような半生状態が訪れる。それはもう、甘美……

    真っ黒な『めふん』(350円)はサケの血合いの塩辛で、北海道の珍味。ちびちびと酒を盗んでいく。

【三平】の暖簾を守る2代目

ここで、店の歴史を少し…

【三平】が大塚に暖簾を掲げたのは、1971年。日本橋の鰻割烹で修行した先代のご主人と冨美子さんご夫婦が、人の縁も手伝ってここ大塚に独立し、開店したのが始まりです。

「北海道で親しまれている『三平汁』のように、たくさんの人に親しまれたくて、店名にしたんです」と、店主の冨美子さん。

当初は、10席ほどの小さな店だったそうですが、満席になると席が空くのを、外で待ってくれるお客さんもいたそう。当時から相当愛されてますね……

    現在、店を切り盛りするのは、佐藤冨美子さんと息子で2代目の晃一さん。

そこから一度移転し、現在の場所へ移ったあと、20年ほど前に先代が亡くなり、息子の晃一さんが板場に立つことになります。といっても、当時、晃一さんは、父と一緒に働いたこともなければ、飲食店での勤務経験もなく、いってしまえば素人同然。東京で生まれ育ち、北海道で暮らしたこともありませんでした。

それでも、父と一緒に働いていた板前さんに料理を教わりつつ、昔からの食材業者との付き合いが切れないように北海道の食材について学び、ただ「店を潰してはいけない」という一心で、お店をやってきました。

    晃一さんに代替わりをしてからも、変わらず多くの人に親しまれている。【三平】という店名に込めた思いのとおりだ。

長年この店に通うお客さんからは、晃一さんの料理は、"お父さんの料理の味に似ている"と言われるそうです。

「あまり、深く考えたことはありませんでしたが言われてみれば不思議ですよね。父が料理しているのはあまり見たことなかったですから」と晃一さん。

父が大塚に掲げた暖簾を、受け継ぎ、守る。話を聞き、改めて「三平の暖簾をくぐって良かったな」という気持ちになりました。

〆は『三平汁』で

『いずし』『ルイベ』『めふん』を熱燗とともに楽しみ、いい具合にお酒が回ってきました。

胃袋が大きい人なら、〆に『網走丼』(ウニ、いくら、カニの最強丼。1,200円)もいきたいところ。ですが、私と同じく酒を飲むとご飯ものがあまり食べられない、という方にぜひおすすめしたいのが『三平汁』(300円)。

そう、この店の名前の由来になっている北海道のソウルフードです。

    『三平汁』(300円)は、北海道の冬の名物料理。色々な魚でだしをとった汁に酒粕と塩で味付けし、サケと野菜を入れてつくる。

ふわりと香る魚介だし。あっさりながら、じんわりと広がっていく旨みが、飲んだ後の胃袋を温かく包み込みます。日本の郷土料理の椀物って、なぜこんなにやさしいんでしょうか。

三平汁で少し酔いもさめて温まったところで、大満足の気分で「ごちそうさまでした!」とお店を後にします。



ほろ酔いのいい気分で、今日食べたおつまみのことを思い返すと、なんだかサケの料理ばかりでしたね。

「これじゃまるで『酒飲み』じゃなくて『シャケ飲み』だな」なんて、くだらないことを考えながら大塚の街を歩いていたら、賑やかで温かな灯りが漏れる暖簾が、またも妖しく自分を誘ってきます。

あの古そうな暖簾の奥には、どんな物語があるんだろう……。気になる。

「いらっしゃい!お一人?カウンターどうぞ!」



あぁ、大塚が好きになってよかった。

今回訪れたお店

【北海道料理 三平】
電話:03-3946-6237
営業:[平日]17:00〜24:00、[土曜]17:00〜23:30
定休:日曜、祝日の月曜
住所:東京都豊島区南大塚2-42-3 サニーヒルズ南大塚 1F

これまでに紹介した郷土料理の地域

この記事を作った人

写真・文/樽井カンゾー

この記事に関連するエリア・タグ

人気のタグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(12/10~12/16)

エリアから探す