鈴木京香インタビュー『グランメゾン東京』三つ星を目指す料理人役!いいお店の基準とは
2019年10月20日から放送の日曜劇場『グランメゾン東京』で料理人を演じる鈴木京香さん。料理人という役柄や12年ぶりとなった木村拓哉さんとの共演、料理の監修を務める【カンテサンス】からの影響など、現在撮影中の鈴木さんに伺いました。
最高のグランメゾンを目指して、挫折した男が再び夢を追いかける
~Story~フランス・パリに自分の店を構えミシュランの二つ星を獲得するも、ある重大事件によって表舞台から姿を消し、どん底に落ちた主人公・尾花夏樹(木村拓哉)は、絶対味覚の持ち主である女性シェフ・早見倫子(鈴木京香)と出会い、もう一度シェフとして生き直すことを決意。周囲と衝突しながらも世界最高の三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作り上げようと奮闘する姿を描く「大人の青春」ストーリーです。
Interview
「シェフらしく」ってそんなに気にしなくてもいいんだなって
──料理人という役柄を演じるにあたり、役作りではどのようなことを大切にされていますか。
鈴木京香(以下、鈴木):最初は「料理人っぽく」というのはどういうことかな、と考えていたんです。でもパリのロケでお邪魔した【ランブロワジー】のシェフ、パコーさんにお会いしたら、自然体で楽しそうにしていらしたんですよ。「シェフはどなたかしら?」と思っていたくらい。近くで笑顔で撮影を見てくださっているその方が、シェフのパコーさんだと伺ったとき、とても嬉しくて「シェフらしく」ってそんなに気にしなくてもいいんだなって。料理人という職業的な役作りよりも、いつものように「どういう性格か」とか、「個性をどう表現しよう」と考えるようになりました。
──鈴木さんが演じる倫子は、食べただけでその素材と調理法がわかる「絶対味覚」という才能の持ち主ですよね。今後のストーリーにどう活きてくるのでしょうか。
鈴木:私が演じるのは、星をとれない料理人。「星をとりたいんだけど、どうしてもとれない。才能がない」と悩んでいるところを、(1話で)尾花の料理を食べて、食材をどんな風に使って、どういう段取りでつくったのかが、分かったのは倫子だけだ、と認めてもらえたことによって、彼女もよりやる気になります。演じているときも、いつもの自分だったら「おいしいな」と食べるところを、「何が入っているのかな」と考えながら食べるようになりました。
──ご自身も「絶対味覚」に近づいてきたと感じる部分はありますか。
鈴木:やっぱり食べたことのないものや使ったことのないスパイスは、理解しようがないんですよね。「聞いたことがないハーブだけど、ドラマのなかで出てくるからちょっと料理に使ってみよう」という感じでやっているうちに、その味がちゃんと判断できるようになってくる。知識が増えることによって理解度も増すんです。倫子は料理が好きだけど、才能がないと思ったから、いろんなところを熱心に食べ歩いたという設定。だから倫子は舌がいいというよりも、勉強熱心だったということではないでしょうか。食べてきたという経験によって、絶対味覚と認められるようになったんだと思います。天性のものじゃないんです。
──普段からお料理をされるということですが、フレンチのシェフということで所作などは学ばれたのでしょうか。
鈴木:勉強しなくちゃいけないと、最初は思ってたんです。フレンチ用のナイフを準備してもらって、家で使っていました。最初はフレンチの基本的なものを作ってみようと思って、本を買って2~3品は順番につくってみたりして。でも途中からそんなにしなくても大丈夫だな、と。所作とか料理人としての役づくりよりも、「なぜここまで料理に打ち込むか」とか「どうして料理が好きになったのか」というほうが大事だなと思ったんです。
ただ、そのフレンチのナイフの切れ味がいいんです。家でそれを使って料理をつくっていると、ものすごく早いですね。お借りしてるいろんな種類のナイフは、肉じゃがをつくるときなどにも使っています(笑)。
──今回共演されている木村拓哉さんも、料理に関してこだわりを持たれた方かと思います。お二人で料理をする演技についてどんなお話をされていますか。
鈴木:木村さんは現場に入ったときにお料理の先生が支度をしていたら、すぐに行って今日はどういうことをするのか、確認をしているんです。早々と準備をなさっているなと見ていてわかりますし、熱心さを感じています。木村さんも理解してくださっていると感じますので、料理の演技についてあえて話しているわけではないけれど、それぞれの向き合いかたはわかっているつもりです。
──木村さんとは12年ぶりの共演ですね。
鈴木:木村さん自身は相変わらず熱心な方だと、今の現場でも常々思いますね。お芝居に対して熱心ですし、現場のスタッフに対してもとても気遣いをしてくださる方です。前(『華麗なる一族』)は敵対する役柄でご一緒して、20年前(『ギフト』)は過去に付き合っていた2人という役柄でした。今回は同じ方向を見て、お互い引っ張り合わなきゃいけない関係です。ほとんど倫子のほうが引っ張ってもらってはいるのだけど、真剣に目標に向かっていないと、尾花のような人には協力してもらえないと思います。
──尾花がつくる料理の監修に【カンテサンス】のシェフ・岸田周三さんが、ライバル店であるgakuの料理の監修に【INUA】のトーマス・フレベルさんが関わっていらっしゃいます。お二人にはお会いしましたか。
鈴木:【カンテサンス】は以前行ったことがあるので、岸田さんが監修についてくださると聞いたときは、すごく嬉しかったです。トーマスさんには【noma】のポップアップ(※1)にうかがったときにお会いしていました。
尾花夏樹(木村拓哉)が【エスコフィユ】時代に披露した一皿
──共演者の皆さんとは行かれましたか。
鈴木:【INUA】にはまだ行けていないんですけれども、【カンテサンス】は木村さん、沢村一樹さん、及川光博さんと4人で行きました。岸田さんがつくって私たちが店内で味わった料理を、今度は私たちのレストランで出すわけです。お料理に限らず、例えば沢村さんは支配人的役割を演じるので、「どのようにお客様を案内するか」などいろいろな勉強ができました。
まだグランメゾン東京のインテリアができる前にお邪魔したので、【カンテサンス】を感じたことによって、「あんな素敵なレストランにもしたいけど、私たちはこうしよう」と準備できました。「こういうお皿がいい」という意向も取り入れてくれましたし、カトラリーから選ばせてくれるというのはなかなかないことです。ありがたかったですね。
尾花夏樹(木村拓哉)が早見倫子(鈴木京香)に振る舞った『手長海老のエチュベアラミニュット』
──【カンテサンス】の岸田さんからアドバイスはありましたか。
鈴木:言葉でのアドバイスよりも、実際にレストランにお邪魔して一皿ずつ味わえたことが何よりの教えでした。そのときの感動とか、「ここがこうおいしかった」という思いを忘れないのが大事かなと思います。
──倫子は「ミシュランの星がいいお店の基準」という強いこだわりがありますが、鈴木さんご自身が思う「いいお店の基準」とは何ですか?
鈴木:居心地の良さですね。高級店だから敷居が高すぎて居心地が悪い、ということはありませんし、こぢんまりとした庶民的な居心地の良さも感じます。シェフやスタッフの理想とするものができ上がって統一感があると、居心地がいいのだと思います。自分の慣れた雰囲気だけじゃくて、新しい感覚も覚えたい。素敵すぎてちょっと緊張する感じも好きだし、いつものお店でいつものようにリラックスして食べるのも大好きです。
(※1)【INUA】のトーマス・フレベルさんはデンマークの名店【noma】出身のシェフ。2015年に【noma】が期間限定で東京に出店した際に初来日している
テッパン! 差し入れ品
前回のインタビューでは、出身である宮城県を代表する【菓匠三全】の『萩の月』を紹介してくれた鈴木さん。
鈴木:まずは自分の出身地のものを、と思って『萩の月』や『ずんだ餅』を選んでいます。次の差し入れはどうしようかなと思っているんですよ。このドラマに入るにあたって、出演者のみんながいろいろな料理やレストランの映画を観ていて、人気があったのは『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』という映画。
【酒肆ガランス】の『キューバンホットサンドイッチ』
『キューバンホットサンドイッチ』1,000円(税抜)
鈴木:その映画に「キューバンサンドイッチ」が出てきます。私、白金台の【酒肆ガランス】の『キューバンサンドイッチ』が大好きで。舞台のときに頂いて嬉しかったことがあるので、タイミングを見て『キューバンサンドイッチ』の差し入れをしたいなと思っています
日曜劇場『グランメゾン東京』
放送日時:2019年10月27(日)
毎週日曜よる9:00~9:45(※第2話15分拡大SP)
スタッフ:製作著作 TBS
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳/東仲恵吾
演出:塚原あゆ子/山室大輔/青山貴洋
主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」(Warner Music Japan)
出演者:木村拓哉/鈴木京香/玉森裕太/尾上菊之助/及川光博/沢村一樹 ほか
撮影/原 務 取材・文/泉 友果子
メディアに勤務後、フリーランスの編集者、ライターに。街や食、旅といったテーマに携わる。
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