名店が教える「スペシャリテの秘密」|【赤坂璃宮 銀座店】の『鹹蛋蒸肉餅(シェンタンヨッペン)』
一度食べたら忘れられない。何度食べても驚くほどおいしい。そう思わせるあの店のスペシャリテには、きっとつくり方に秘密があるはず。そうだ。その秘密、直接シェフに聞いてみよう。
中国の家庭でつくられていた
昔ながらの家庭料理
〝鹹蛋〞と書いてシェンタンと読む通称〝塩卵〞は、その名の通り塩水にひと月ほど漬け込んだ卵のこと。中国や台湾の家庭ではおなじみの発酵食品であり、また調味料的な役割も担っている。現地では、黄身の色が濃く脂分もあり、濃厚な旨みを持つアヒルの卵の鹹蛋がポピュラーだが、「鶏卵でも同じように作れますよ」の一言は、中華料理界の巨匠・譚彦彬シェフ。
手前左から時計回りに胡椒、片栗粉、豚肩ロース肉、中国醤油(日本の溜まり醤油でも可)、塩卵、塩、ごま油、戻した干し椎茸。中央に置いてあるのは長ネギ
ここ【赤坂璃宮銀座店】で使っている塩卵も自家製だそうで、譚シェフいわく「塩卵は、ゆでてお粥に入れたり、ピータンやクレソン、春雨と煮込んだりして食べていました。子どもの頃からなじみ深い食べものですね。」とのこと。
『鹹蛋蒸肉餅』もその一つで、いわば〝塩卵入り蒸しハンバーグ〞だ。たたいて細かく刻んだ豚肩ロースがベース。ここに塩卵の白身を塩の代わりに生のまま入れ、黄身も刻んで混ぜ込み、蒸しあげたもの。挽肉ではなく包丁で刻んだ塊肉を使うのがポイントの一つだが、蒸しあがるまで決して蒸し器の蓋を開けないことも必須事項。「途中で蓋を開けると蒸し器内の温度が下がり、旨みが抜けてしまう。」とは譚シェフ。ちなみに自家製塩卵は、現地のそれに比べ塩分はやや控えめになっている。

譚 彦彬さん
「お粥に入れたり、豚肉などとスープにしても美味しいですよー!」
『鹹蛋蒸肉餅』のつくり方
調味料代わりの塩卵と手切りのひき肉がポイント
ひと月塩水に漬けるだけでできるお手軽“塩卵”。調味料代わりに料理のアクセントにと活躍してくれそうだ。
材料(2~3人分)
・豚肩ロース肉 200g
・干ししいたけ 1枚(水に一晩浸けて戻しておく)
・長ねぎ 20g
・塩卵 1個(そのうち白身は10g)
・醤油 小さじ1/2
・胡麻油 小さじ1
・こしょう 少々
・片栗粉 小さじ1
つくり方
❶豚肩ロース肉はさいの目切りにし、さらに粗めに刻む。干ししいたけと長ねぎも、豚肉の大きさに合わせてカットする。塩卵の黄身も同様に刻んでおく。
❷ボールに1の肉と干ししいたけ、長ねぎ、塩卵の白身と黄身半量を入れて混ぜ合わせ、時折、ボールに10回ほどたたきつけるようにして混ぜていく。ある程度混ざったら、醤油、胡麻油、こしょう、片栗粉を入れ、粘りが出るまで混ぜる。
❸2を皿に載せ、7ミリ程度の厚さのハンバーグ状に伸ばす。上に残りの塩卵の黄身を散らし、強火の蒸し器で約7~8分蒸せば完成だ。
『鹹蛋蒸肉餅』3つのポイント
Point①肉は機会を使わず、手切りにする
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機械を使うと肉の繊維を壊してしまうことになり、蒸しあがったときの食感が悪くなると共に、肉汁が出てしまう。
刻んだ肉は混ぜすぎないよう気をつける
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粘りが出るまでよく混ぜることは必要だが、混ぜすぎるとコシが出すぎてしまうので気をつけよう。肉が白っぽくなる手前でやめると良い。
肉を伸ばす厚さも蒸しあがりを決めるコツ
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厚すぎては中まで火が入らず、薄いと旨みが逃げてしまう。最適な厚さは約7~8ミリ程度。また、蒸している最中は決して蓋を開けないことも、重要なポイントの一つだ。
いかがでしたでしょうか。【四川料理 趙楊】の麻婆豆腐を、ぜひご自宅で再現してみてください。
教えてくれたのは 譚 彦彬さん
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1943年横浜中華街生まれ。16歳の時からこの道一筋。京王プラザホテル【南園】副料理長、ホテルメトロポリタン【広州】の総料理長を経て、1996年「赤坂璃宮」のオーナシェフに。伝統の広東料理を踏襲しつつ、常に和や洋の分野からの刺激を受け、進化し続ける料理が魅力だ。
この記事を作った人
撮影/三木 麻奈 取材・文/郡司 周(ヒトサラ編集部)
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