一年中、極上の上海蟹を楽しめる名店が日本初上陸!【蟹王府 日本橋店】東京・日本橋|ニュースな新店
蟹のシーズン、上海蟹を食べることをと楽しみにしているグルマンも多いのではないだろうか。今期はコロナ禍で上海蟹を食べられなかったという人にも朗報。2020年12月、上海にある上海蟹の名店【蟹王府(シェワンフ) 日本橋店】が日本橋に国外初出店したのだ。オープンしたてのこちらの店では、ランチでも、ディナーでも、2月頭までなら姿蒸しも、そして通年食べられる上海蟹料理があるとの情報をキャッチ。本場そのものの味を楽しみに早速行ってきた!
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自社養殖場の技術で生まれた極上の上海蟹
温故知新、古い料理を現代的にリメイクした絶品料理
注目!日本店ならではの新しい料理
自社養殖場の技術で生まれた極上の上海蟹
食の編集者である私にとって、毎年、”これを食べずにはいられない”という食材がいくつかある。上海蟹はそのうちの一つだ。毎年、雌も雄も美味しくなる11月から12月にかけて、お気に入りの店で上海蟹の料理を堪能し、「今年も一年が終わるなあ〜」と感じることが通例だった。しかし、去年はこのコロナ禍でお気に入りのお店が休業。上海蟹を食べることができなかった。
なんとなく、寂しく思っていたところ、本場上海の人気店【成隆行 蟹王府】の初となる海外第一号店【蟹王府 日本橋店】がオープンしたという情報をキャッチ。60年以上上海蟹の生産から卸をしている老舗企業が運営しているだけあり、なんと上海蟹の姿蒸しは2月頭まで、そしてそのほかの上海蟹料理は通年食べられるという。今期の上海蟹を味わうことができるなんて素敵!と早速足を運んでみた。
お店に入ると、入り口には空輸された活きのいい上海蟹がディスプレイされている。これらの蟹は上海から頻繁に空輸されているという。今の時期(1月中旬)は、たっぷりとした白子と身がつまっている雄のみが届く。なんでも、雌は次のシーズンのための繁殖用のものだけを残し出荷しないそうだ。
しかし、なぜ旬を過ぎた今でも、状態の良い蟹が手に入るのだろうか。
秘密はこの蟹が、蘇州の太湖にある自社の養殖場で育てられることにある。上海蟹は冬眠する前が栄養を蓄え、一番美味しくなる。その性質を利用し、8月から2月の間、工場の技術で蟹の状態をコントロールし最高の状態で生産することを可能にしたのだ。さらに、食卓に登る蟹は、4回以上の免疫検査をクリアし、甲羅の艶がよく重さも申し分ない極上品のみ。見せていただいた上海蟹は、どれもぷっくりと太っていて、生の状態でもおいしそうだ。
温故知新、古い料理を現代的にリメイクした絶品料理
『南蘇名物 夫婦蟹味噌ソースかけごはん』
そんな極上の蟹を、姿蒸しはもちろん、様々な料理で楽しむことができるのがこちらの店の真骨頂。もともとは上海に伝わる古い蟹料理を、張料理長がアレンジを加え、今の時代のご馳走に仕立てている。
例えば、こちらの店のスペシャリテの一つ『南蘇名物 夫婦蟹味噌ソースかけご飯』。一昔前、まだ電化製品が普及していない時代の蘇州では、上海蟹のシーズンが終わってもその味を楽しめるよう、白子、内子、味噌、身をたっぷりの油で炒め瓶詰めして保存していたそう。
そんな古い料理からヒントを得て、できあがったのがこの料理。まず上質な蟹で蟹油を作り、雄蟹の味噌、白子、雌の内子をその蟹油とともに低温でゆっくり練り上げる。一人前をつくるのになんと10匹の蟹が使われるという。
蟹のねっとりとした濃厚な旨味を凝縮した味噌を、白いご飯の相性が抜群なのは言うまでもない。さらに添えてあるバルサミコをひとたらしすれば、蟹の甘みがグッと引き出され、さらに魅力を増していく。ゾクゾクするおいしさと、たくさんの命を一度にいただいている背徳感のはざまで、なんともいえぬ気分を味わう。これは、まさに昇天するほどの味わいだ。
上海5店と日本橋店すべてを見る総料理長の張志文(チョウシブン)さん
料理長の張さんによると、おいしい上海蟹の条件は「肉の繊維が繊細かつ崩れないこと。甲羅を開けたときにたっぷりの味噌があり、雄なら白子、雌なら卵がつまっており、脂の部分がしっかり入っているもの。そして足や爪の身が甘いこと。それでいて味わいはしつこくなく、香ばしい香りがするのが特徴」とのこと。
そんな蟹の身のおいしさを味わえるオリジナル料理が『蟹肉炒め ポーピン添え』だ。
蟹味噌と蟹肉を合わせて炒める料理もまた、上海に伝わる古い料理だという。その料理をこちらでは、3.5両(約175g)以上の身がつまった上海蟹を一度蒸し、胸肉の部分を丁寧にほぐして、蟹の油、味噌で炒め、ポーピンという薄餅につめて食べる形に進化させた。
たっぷりと3匹分の蟹の胸肉でつくる『蟹肉炒め ポーピン添え』
まずは、蟹の肉だけを一口。濃厚な味噌をまとい、しっとりと甘みのある蟹肉はそれだけでうっとりとするおいしさ。さらにそれをポーピンにつめて食べると、パリパリとした食感が加わり、さらに周りのゴマの香りが弾けて新たなおいしさに変化する。これがまた、ソムリエの木村好伸さんが「蟹やゴマの香ばしさ、旨味と合うと思いますよ」と選んでくれたグラスシャンパン(クリュッグ!)に本当によく合う。
蟹の旨味や香りはパンチがあるのに、くどくない。その理由を聞くと、蟹それぞれの個体の脂肪分を見極め、炒めるときの油を緻密に調整するのだという。調味料は塩と砂糖、そして生姜のみじん切り、こしょうとお酢少々のみ。シンプルゆえ、素材がもつ香りや油分、旨味をどれだけ引き出すのか、料理人の調理技術が問われる料理でもあるだろう。
注目! 日本店ならではの新しい料理
ここでしか食べられない『日本橋店限定 手羽先の蟹肉五目詰め』
そして、この店でぜひ注文してほしいメニューが、日本限定の料理『日本橋限定 手羽先の蟹肉五目詰め』だ。一見手羽餃子のようなこちらの料理、中にはなんと上海蟹を炊き込んだもち米がみっちりつまっている。「日本人は焼き鳥など鶏肉が好きだと思い、鶏肉と上海蟹を融合させた料理を作りました」と張さん。
水につけておいたもち米を、蟹味噌、油、調味料で炒めて香ばしさがたったところで骨を抜いた手羽先に詰める。低温でじっくり揚げた後、最後に皮をパリッとさせるために高温で仕上げているのだという。いわばピラフの要領で旨味を米に吸わせた後、低温の油でゆっくり加熱することで鶏肉の水分や旨味も含ませながら双方のおいしさを閉じ込めるのだ。
揚げた鶏肉の香ばしさに、しっとりとした鶏肉。そこに蟹の旨味と香りが広がるもち米が合わされば、ボリュームもおいしさも満点! これは昼のランチセットなどにも、追加でぜひ注文してほしい。
場合によってはテイクアウトも対応してくれるとのことなので、次はテイクアウトをしようと心のメモに書き留めた。
『蟹尊』コース(50,000円)の中盤に登場する、厳選された雄の上海蟹の姿蒸し
もちろん、今回目当てにしていた上海蟹の姿蒸しも文句のない美味しさ。こちらでは、スタッフの方が、足、甲羅、身、爪、ときれいに剝いてくれて皿に並べてくれる。活きの蟹が入る8月下旬から2月第一週程度と他店より長い間楽しめるのもいい。
上質な蟹ならではの姿蒸しも堪能したけれど、こちらの魅力はやはり、現地に行かずとも食べられる、上海の本場そのものを感じる料理の数々にあり。手軽に食べられるランチの蟹肉入り担々麺から、贅をつくしたコースまで、どの料理からも現地の風を感じることができるだろう。
そんなことを伝えると、張さんは「これからは、定番の料理だけでなく、日本ならではの食材と、上海蟹を融合させた料理をもっとつくっていきたいですね」と、笑顔で語ってくれた。上海の名店が日本でどう変化していくか。これは、シーズンごとに通わなくちゃ。
また食べに来たい上海現地そのものの味、そしてこれからの進化を楽しみに、店を後にした。
【蟹王府 日本橋店】店舗詳細
住所:東京都中央区日本橋室町2-1-1三井二号館 1F
電話: 03-6665-0958
営業: 11時00分~15時00分, 17時00分~22時00分
休日:無休(施設に準じる)
ランチセット:2,800円〜 ディナーコース:25,000円〜
アラカルトメニューもあり。
撮影/小林由喜伸 取材・文/山路美佐
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