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更新日:2022.11.26食トレンド

2022年「世界のベストレストラン50」No.1はコペンハーゲン【ゼラニウム】。昨年の【ノマ】に続き「サステナブル」が注目のキーワードに

2022年7月18日、記念すべき20回目を迎えた「世界のベストレストラン50」の授賞式が、ロンドンのオールド・ビリングスゲート・マーケットで行われました。

世界のベストレストラン50,2022

20回目を迎えた授賞式開催、元々はモスクワで開催される予定でしたが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、イベント全体が本部のあるロンドンに変更され、ロシアのレストランはリストから除外されました。さらにレストランの「サステナブル」のあり方も、さらなる進化を見せています。続くコロナ禍でより一層注目される、ワークライフバランスの取れた働きやすい厨房環境も追求するデンマークの【ゼラニウム】が世界一に輝くなど、ポスト・コロナのレストランのグローバルな潮流をご紹介していきます。

緊迫するウクライナ情勢。民族の垣根を超え、難民への食の提供を

2022年2月のロシアのウクライナ侵攻を受けて、世界のベストレストランのリストからは、ロシアのレストランが評価の対象外として除外されました。食の世界にも、光熱費や食材の高騰など、多くの影響を与えるだけでなく、心の痛むニュースが日々報道されています。

    ハーキュリーズ氏(右端)とティモシカーナ氏。国境間の分断が進む中で、人道的な支援を協力して行う姿に共感が集まった

    ハーキュリーズ氏(右端)とティモシカーナ氏。国境間の分断が進む中で、人道的な支援を協力して行う姿に共感が集まった

血縁関係も多く、「兄弟国」と語られることもある両国の精神的な分断が生まれる中、学生時代からの友人だという、ウクライナ人の料理ジャーナリスト、オリア・ハーキュリーズ氏とロシア人のレストラン経営者アレッサ・ティモシカーナ氏が、食を通して難民支援を行ったことが注目を集め、飲食の世界に革新を起こす活動をしている人を表彰する「チャンピオン・オブ・チェンジ」賞を受賞しました。二人はロンドンで難民支援のためのNPO法人「Cook For Ukraine」を立ち上げ、レストランイベントを行うなどして募金を集め、10月初頭までに180万ポンドをユニセフに送っています。

2022年世界No.1は【ゼラニウム】ワークライフバランスを考えたサステナブルな厨房に注目

今年1位になった、デンマーク・コペンハーゲンの【ゼラニウム】は、去年1位の【ノマ】同様、従業員が働きやすい環境を作っていることで知られています。

例えばゼラニウムは、水曜から土曜の週4日のみ、ランチは金曜と土曜のみという営業スタイルをとっています。「長すぎる労働時間で、家族と過ごす時間や自分自身の時間がなくなると、長い目で見て良いレストランを作れない」というのが、オーナーシェフのラスムス・コフォード氏の考えです。

    【ゼラニウム】のコフォード氏(右から4人目)は、ボキューズドール世界一、ミシュラン三つ星、そして今回の世界のベストレストラン50での世界一と、多くのタイトルを得ている

    【ゼラニウム】のコフォード氏(右から4人目)は、ボキューズドール世界一、ミシュラン三つ星、そして今回の世界のベストレストラン50での世界一と、多くのタイトルを得ている

コフォード氏はフルマラソンを走るスポーツマンとして健康に配慮した食生活を送っていることでも知られています。「伝統的なデンマークの食事は肉を食べ過ぎ、地球の環境にも人の健康にも良くない」と、ゼラニウムでは、今年1月に肉の提供を一切やめて野菜とシーフードを主役にした料理にスタイルを変更しただけでなく、コフォード氏個人のプロジェクトとして、プラントベース 料理を提供するポップアップ【アンジェリカ】を不定期にスタート。家庭でも再現可能なカジュアルな料理をレシピと共に公開し、健康的な食を広めるための活動を行っています。デンマーク発の心も体も健康的で、私たちの人生をサステナブルにする食のありようは、これからも注目を集めそうです。

今年の注目のランキング、国境を閉じていた日本も健闘

2位はヴィルヒリオ・マルティネス氏の【セントラル】で、南米初の世界一を達成できるか、期待が高まっています。日本には今年7月にマルティネス氏が監修する【MAZ】がオープンしており、アジアにおける、ファインダイニングとしての南米料理のムーブメントの拡大にも注目です。

さらに今年10位以内で最も多くラインクインしたのはスペイン勢。3位に元【エルブジ】の研究開発メンバー3人が立ち上げた、バルセロナの【ディスフルタール】(昨年5位)、4位にマドリッドの【ディヴェルソ】(同20位)、6位に【アサドール・エチェバリ】(同3位)と、3店が高い評価を受けています。

来年6月の世界のベストレストラン50の開催地はスペイン南部のヴァレンシアとなっており、スペインへの関心がますます集まりそうです。

    国境が閉じていたにも関わらず、アジア最高位にランクインした【傳】長谷川氏とチーム

    国境が閉じていたにも関わらず、アジア最高位にランクインした【傳】長谷川氏とチーム

また、同じスペイン語圏のメキシコも近年の注目です。北アメリカのNo.1レストランは3年連続でメキシコ【プジョル】(今年5位)に輝いています。今年のNo.2も同じくメキシコで、9位に【キントニル】が入っており、2010年にユネスコの無形文化遺産に登録されたメキシコ料理の存在感がじわじわと高まっています。
日本のレストランは、アジア圏では最高位の20位に【傳】、30位に【フロリレージュ】、41位に【ラシーム】(初のワールド入り)、45位に【NARISAWA】がランクイン。50〜100位のランキングには59位に【茶禅華】が、82位に【セザン】が入り、つい10月まで一般旅行者の入国ができなかった国としては大健闘の結果と言えるでしょう。

日本評議委員長の中村孝則氏は、「このランキングは、旅して食べるのが基本ですが、今回の投票対象期間は完全にコロナ禍中。フーディ達がそれぞれの国の地方のレストランを開拓し、このランキングらしい、新たな発見を多く提供できるリストになったのではないでしょうか」と総括しています。

社会的な問題解決のための、シェフたちの活動

また、コロナ禍を通じてより鮮明になったのが、社会的な問題解決のために動いているシェフ達の活動です。コロナ禍、そしてウクライナ侵攻と、世界が不安定な中だからこそ、食を通した温かさや活力が求められていると言えるでしょう。

世界No.1シェフにも選ばれたマッシモ・ボットゥーラシェフが手がけるホテル「Casa Maria Luigia」のヘッドシェフ、ジェシカ・ロスバルヘッド氏は、今年4月、拠点とするイタリア・モデナに【ルーツ】というレストランを開店しています。ここは難民の女性に数ヶ月間職業訓練を行い、それぞれの郷土の味を披露してもらうというコンセプトで、今や予約の取れない人気店となっています。

また、寒さが厳しさを増す中、2019年にアイコン・アワードに輝いたアメリカのホセ・アンドレシェフ率いる「ワールド・セントラル・キッチン」が、11月までにウクライナの人々に1億8000万食を提供するなど、社会問題の解決にむけて動くシェフの活動は、より一層注目を集めそうです。

今回「世界のベストレストラン50」に選ばれたレストランは以下の通りです。

|1~10位
1.【Geranium】デンマーク/コペンハーゲン
2.【Central】ペルー/リマ
3.【Disfrutar】スペイン/バルセロナ
4.【Diverxo】スペイン/マドリード
5.【Pujol】メキシコ/メキシコシティ
6.【Asador Etxebarri】スペイン/アトクソンド
7.【A Casa do Porco】ブラジル/サンパウロ
8.【Lido 84】イタリア/ガルドーネ リヴィエーラ
9.【Quintonil】メキシコ/メキシコシティ
10.【Le Calandre】イタリア/ルバーノ

|11~20位
11.【Maido】ペルー/リマ
12.【Uliassi】イタリア/セニガッリア
13.【Steirereck】オーストリア/ウィーン
14.【Don Julio】アルゼンチン/ブエノスアイレス
15.【Reale】イタリア/カステル ディ サングロ
16.【Elkano】スペイン/ゲタリア
17.【Nobelhart & Schmutzig】ドイツ/ベルリン
18.【Alchemist】デンマーク/コペンハーゲン
19.【Piazza Duomo】イタリア/アルバ
20.【傳】日本/東京

|21~30位
21.【Mugaritz】スペイン/サン セバスティアン
22.【Septime】フランス/パリ
23.【The Jane】ベルギー/アントウェルペン
24.【The Chairman】中国/香港
25.【Frantzén】スウェーデン/ストックホルム
26.【Restaurant Tim Raue】ドイツ/ベルリン
27.【Hof Van Cleve】ベルギー/クライスハウテム
28.【Le Clarence】フランス/パリ
29.【St. Hubertus】イタリア/サン カッシアーノ
30.【Florilège】日本/東京

|31~40位
31.【Arpège】フランス/パリ
32.【Mayta】ペルー/リマ
33.【Atomix】アメリカ/ニューヨーク
34.【Hiša Franko】スロベニア/コバリド
35.【The Clove Club】イギリス/ロンドン
36.【Odette】シンガポール
37.【Fyn】南アフリカ/ケープタウン
38.【Jordnær】デンマーク/コペンハーゲン
39.【Sorn】タイ/バンコク
40.【Schloss Schauenstein】スイス/フュルステナウ

|41~50位
41.【La Cime】日本/大阪
42.【Quique Dacosta】スペイン/デニア
43.【Boragó】チリ/サンティアゴ
44.【Le Bernardin】アメリカ/ニューヨーク
45.【Narisawa】日本/東京
46.【Belcanto】ポルトガル/リスボン
47.【Oteque】ブラジル/リオデジャネイロ
48.【Leo】コロンビア/ボゴタ
49.【Ikoyi】イギリス/ロンドン
50.【SingleThread】アメリカ/ヒールスバーグ

そのほか、日本勢で100位以内に選出されたのは以下の通りです。

59.【茶禅華】日本/東京
82.【Sézanne(セザン)】日本/東京

この記事を作った人

取材・文/仲山今日子

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