コペンハーゲン【Noma(ノーマ)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第49回
京都でのポップアップも即日完売。世界一有名かつ予約が取れないと言われるデンマーク・コペンハーゲンにあるレストラン【Noma(ノーマ)】。今回は2022年末に訪れたときのランチタイムの風景をお届けします。
2022年の暮れ、コペンハーゲンを旅しました。コペンハーゲンはいまや世界の食通が集う場所で、日本でも有名な【Noma(ノーマ)】をはじめ、世界のベストレストランの常連がこの小さなエリアに集まっています。(ちなみに2022年のランキングでも【Geranium(ゲラニウム)】(1位)、【Alchemist(アルケミスト)】(18位)、【Jordnær(ヨーネア)】(38位)はコペンハーゲンにあるレストランです)。
今回の旅では【ノーマ】、【ゲラニウム】、【アルケミスト】で食事することができました。それぞれ個性的で時代をリードするレストランですが、ここでは【ノーマ】のランチ風景を綴ろうと思います。
レネ・レゼッピ・シェフとの再会
北欧料理を世界的に有名にし、多くの影響を与え続けてきた【ノーマ】は、レネ・レゼッピさんという革命的なシェフが率いる新北欧料理(ニュー・ノルディック・キュイジーヌ)のお店です。8年前に東京でポップアップをしたときには、生エビに蟻を乗せ、高級レストランで蟻を食べさせるのか、と話題になりました。おりしも2023年3月に京都でのポップアップ(エースホテル京都)を発表したばかりでしたので、そんな話も聞けたらいいなと思い、出かけたのです。
市内からバスに乗り、少し早く着いたらウエイティング・ルームでちょうどレネ・シェフが暖炉に焚火をくべているところで、8年前の東京の話などすることができました。レネさんは当時すごく尖がっている印象でしたが、久しぶりにお会いしたら随分落ち着いた感じになっていました。
テーブルに案内されてからも、しばらく彼は私のテーブルで話をしてくれました。京都に行くのがすごい楽しみだと彼は繰り返し、8年前の蟻のようなサプライズは?との問いには、笑って答えません。でもきっと何かやってくれるんでしょうね。
2022年冬のランチメニューより
さて、ランチメニューは「Game & Forest Season 2022」というもので、初冬の北欧の森の柔らかな光の中を散策しているような構成でした。
トナカイのハツ(心臓)という【ノーマ】らしい小品からのスタートです。照り焼きテイストでソースもマヨネーズ風なので、わかりやすいおいしさです。以下、写真とともに流れを見てください。
そしてすぐに頭骸骨に入ったカスタードソースに花粉を詰めたもの。これは日本の【Inua(イヌア)】でいただいた味を髣髴とさせます。
次は夏に取ったフルーツを乾燥させたものを戻して野兎のオイルを添えたもの。
次はトナカイのシビレ(胸腺)と苔を揚げたもので、添えられたカシスのソースも素晴らしく、シビレのふわっとパリっとした食感とソースの甘みにうっとりしてしまいます。
ワインのセレクトも好みでした。ジュラのワインをいただき、クリスティアン・チダ のヒンメル・アウフ・エルデンも登場。
次はノロジカのサンドウィッチ、蜜蝋入り。冷たいスープは苔などの森のエキス。甘みのある肉サンドに寄り添います。
これもNomaっぽいトナカイのラグー、ペニス入りです。ハーブが強く刺激的。
【イヌア】のシェフだったトーマスさんもこちらに戻っていて、テーブルに来てくれ、再開の握手をします。さっきの頭骸骨料理はやはり彼の手になるものでした。
次は、昆布かと思いきや、うずらの卵を野草の酢漬けでくるんだもの。野沢菜のような感じ。ここからトーンが少し変わってきました。そしてカボチャを鰹節のように料理したもの、白スグリソースです。
これから2つはデザートっぽい感じです。マリネしたヘーゼルナッツとキャビアに、もうひとつは伝統的なタコ焼きのようなデザートをアレンジし、熊肉で皮をつくったもの。ハーブの香りにつつまれて優しい食感です。
そしてバラの果実やリンゴの昆布茶漬け。
そしてまた肉に戻ります。メインは名物の鴨料理。日本酒・鍋島を合わせてくれました。トリュフ香のする日本料理の趣です。手でソースを付けて口に入れると、鮨をいただくような感じになるから不思議です。
もうひとつの肉料理は、ノロジカのグリル。これが締めになりました。
デザートは2品。クランベリー、プラムとアイスクリーム・ソース。芥子の実が入っています。もうひとつはトナカイの血の入ったキャラメル。コーヒーをいただきます。
残念なお知らせが
落ち着いたころ、日本人でスーシェフをつとめる高橋惇一さんがテーブルに来てくれて、ラボなど案内してくれました。優雅で気持ちのいい昼下がり、森のエキスをいっぱい吸った気分です。
それからしばらくして【ノーマ】が閉店する知らせが届きました。これだけのクオリティのものを維持していくことの難しさを、改めて知らされた気もします。
これからは形態を変えての再出発となるのでしょうが、賛否両論さまざまに語られてきた【ノーマ】。さすがに閉店となると寂しいです。即日完売したと言われる京都のポップアップは、きっとファインダイングの歴史に残るイベントになるのでしょうね。
小西克博/ヒトサラ編集長
北極から南極まで世界100カ国を旅してきた編集者、紀行作家。
-
函館旅グルメ
食材や空間に函館らしさを感じるオシャレなお店5選|北海道・函館
-
海外旅グルメ 連載
イギリス【ザ・ニュート・イン・サマセット(The Newt in Somerset)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第59回
-
大宮駅周辺グルメラボ
埼玉・大宮で飲むならここがオススメ|厳選4選
-
軽井沢食トレンド 旅グルメ 連載
軽井沢【Restaurant Naz(レストランナズ)】~ヒトサラ編集長の編集後記 第33回
-
立山食トレンド 旅グルメ 連載
富山【ヘルジアン・ウッド・ザ・キッチン/ザ・テーブル】~ヒトサラ編集長の編集後記 第32回
-
飯田橋食トレンド 連載
(2021年3月31日閉店)>【INUA(イヌア)】(飯田橋)|【noma】の正統で華憐な遺伝子 ~ヒトサラ編集長の編集後記 第25回
-
広尾食トレンド デート・会食
新世代の女性シェフ~【aeg(エッグ)】辻村直子さん~
-
恵比寿食トレンド
元【noma】のCOFFEE担当Sophia氏が期間限定でコーヒースタンドをOPEN
-
海外食トレンド 連載
【noma】~あるいは豊饒なる周縁より<ヒトサラ編集長の「編集後記」第1回>