「世界の今」を体験できるハイレベルなモダンスパニッシュ|銀座【MASIA(マシア)】
日本ではフレンチやイタリアンはクラシックからモダン、カジュアルから高級店まで多彩ですが、スパニッシュとなるとまだ幅がありません。そこに現れたのが、故郷、スペイン・カタルーニャの郷土料理や芸術性を世界に発信することをミッションに掲げるマテウ・ビジャレットシェフです。魂はカタルーニャに深く根ざしながらもヨーロッパ、アジアの名店で積んだ経験、知識を活かして昇華させたモダンなお皿の数々をはじめ、お店の魅力を紹介します。
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カタルーニャの芸術的センスも味わえる
「海と山」がコンセプト
秀逸スペインワインにも注目!
美食だけでなくカタルーニャの芸術的センスにも触れられる
「日本でスペイン料理というと、昔ながらのパエリアやアヒージョのお店が圧倒的に多いですよね。伝統をベースに個性を表現するモダンスパニッシュがまだまだ知られていないのが残念。素晴らしい食材、アーティスティックな感性、素晴らしいお酒があることをプロモーションするのが私のミッション」と話すマテウシェフ。
父、母、祖母皆が料理好きという家族のもとで育ち、幼少の頃からカタルーニャやスペインの郷土料理に誇りを持っていたマテウシェフ。15歳から料理の道に入り、スペインだけでなく、ドイツ、オランダ、香港、シンガポール、そして日本では大阪の【HAJIME】など世界の著名なレストランで経験を積み、技術はもちろん、洗練された感覚を磨いてきました。
カウンター席ならマテウシェフの繊細な盛り付けの様子を眺めることができる
まず、料理を味わう前に、器の造形と美しく繊細な盛り付けに驚かされます。
「器はすべてバルセロナの工房に特注しています」とマテウシェフ。カタルーニャ州の首都・バルセロナは、美食の街としても知られていますが、サグラダ・ファミリアやグエル公園などで知られるガウディの建築作品でも有名。「ガウディに代表される一際個性的な芸術性もカタルーニャ人の特徴です。私の料理もお皿を含めて完成します」。
自然の造形を映したような個性的なお皿。カトラリーもバルセロナから
料理に合わせてお皿もセレクトされている
場所は様々な店舗が入る銀座ベルビア館8階ですが、店内に入ると、世界的に人気となっている木の温もりを活かした北欧モダンなインテリア。所々にスペインのアーティストの作品も配され、心豊かな時間を過ごすことができる雰囲気です。
ゆったりとした空間の中にカウンター、ベンチソファのテーブル席など様々なシーンが用意されている
オープンキッチンに面したカウンター席のほか、銀座の街並みを見下ろす窓際席、ゆったりと会食を楽しめるテーブル席に加え個室も1室完備。ランチも営業しているので、カジュアルから大切な会食までTPOに合わせて利用できる使い勝手も魅力です。
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デートなら窓際席がおすすめ
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個室も完備で接待など大切な会食にも使える
新鮮な魚介と肉を一皿の上に。“Mar y Montana”(海と山)がコンセプト
南は地中海、北はピレネー山脈に囲まれたカタルーニャ地方の料理。
「昔、漁師と猟師が海のもの、山のものを物々交換して二つが融合する郷土料理が生まれ、その料理法が何世代も受け継がれていったのだと思います」とマテウシェフ。
イベルコ豚などの熟成加工肉、オリーブオイルやシェリービネガー、スパイスなど調味料、米などカタルーニャやスペイン産の高品質のものに強くこだわりながら、魚介、野菜、ジビエなど鮮度が高い日本の旬の良いものも厳選して料理を生み出しています。
『ボンバ・ライス 蟹 雲丹 豚バラ肉パンチェッタ』 料理はすべて13,310円~のディナーコースの一皿(メニューは季節によって変わる)
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布の袋に入っているスペイン産の『ボンバ・ライス』
スペインで最も高価なお米“ボンバ・ライス”を、魚介のだしでリゾットのように炊いた自慢の米料理。大粒の“ボンバ・ライス”はスープをたっぷり吸っても煮崩れすることなく、噛んだ瞬間、その名の通り爆弾のように弾けます。
また具に“山のもの”であるパンチェッタが入ることで旨みと香りに奥行きが出てグラマラスでコクのある濃厚な風味に。それでいて良質な脂のおかげで、後味は軽やか。これはマテウシェフのすべてのお皿に共通する特徴でもあります。
『イノシシのシチュー ベシャメル・ローズマリー風味 カネロニ包み』 器使いはもちろん、口当たりの滑らかさ、食後の軽やかさで洗練を感じさせるモダンな一皿に
山の稜線、あるいは波紋のようなお皿で供されたのは、イノシシのシチューを詰めて蒸し上げたカネロニに、ローズマリー風味のベシャメルソースがかかっています。カネロニといえばイタリア料理でよく使われる幅広のパスタですが、スペインではカタルーニャだけこのカネロニを使った料理がポピュラーなのだとか。
郷土料理の面影も残しながら、シチューもベシャメルソースも丁寧な仕込みで驚くほど滑らか。カタルーニャ産の黒トリュフも素晴らしい芳香を放ち、美味なる食材の宝庫なのだと改めてカタルーニャの魅力に感心させられる一皿です。
濃厚な海の香りが口いっぱいに広がる『アンコウ 海老 アサリのサフランソース』
最後に紹介するのは、カタルーニャの“スケッツ”というブイヤベースのようなスープをアレンジした一皿です。カタルーニャではとてもポピュラーな魚、アンコウはじめ海老などの海の幸と野菜にサフランを加えてごった煮にする郷土料理もマテウシェフの手にかかるとこの通り。
スープではなく、アサリのだしにサフランを加えた旨みたっぷりのソースに仕立て、ブイヤベースの添え物としてお馴染みのニンニクのソース(アイオリ)にもサフランを使い、リッチな香りと共にアンコウを味わうことができます
まだ知られざる秀逸のスペインワインに出会える
ワインをセレクトしているのは海外の星付きレストランでも活躍してきた経験も知識も豊富なソムリエ・長谷川憲輔氏です。料理と同様にすべてスペイン産にこだわり、クラシックなスタイルのものから若手生産者によるモダンでナチュラルな味わいのものまで幅広いラインナップも楽しみなところです。
ボトルやエチケットも洗練されているスペインのワイン。経験豊かなソムリエの長谷川氏をしても「未知の秀逸なワインがまだまだある」とのこと
しかも、「他国のワインに比べてスペイン産はまだまだ価格が抑え目なのも魅力」と長谷川氏。ワインだけでなく、シェリー、ベルモットなどスペインのお酒に親しみ、新たな美味を発見する良い機会となるでしょう。
店舗のエントランスの壁の一部がワインセラーになっている
カタルーニャやバスク地方のモダン・キュイジーヌを学んだ日本人シェフのお店はありますが、スペイン人シェフが活躍するお店は日本では稀有です。大航海時代には世界に大いに影響を与えたスペインですが、その後は自国の優れた芸術や美食にあまりに満足しているからか、海外にあまりアピールしてこなかったのかもしれません。
バルセロナ・グエル公園のシンボル的存在、モザイク調の青トカゲのオブジェも飾られている
ガウディしかりですが、100年経ってもなお時代の先を行っているような先取の気概を持つカタルーニャ人の魂に触れながらの食事は、文化や芸術についても深く考察する知的な時間になること請け合いです。知られざる魅力に刺激や感動を受ける一方、海や山の恵みにあふれた日本との共通性に親しみやすさも感じることもでき、気負わず楽しめる素敵なお店です。
撮影/佐藤顕子 取材/藤田 実子
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