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更新日:2017.04.18グルメラボ

アクは身を助く!? 春の味覚・山菜の秘められたパワー

天ぷら、おひたし、炊き込みご飯……。独特の香りとほろ苦さに春を感じさせる山菜の美味しい季節がやってきました。山菜の調理には「アク抜き」が必須ですが、実はそのアクのなかにこそ、山菜がもつさまざまな「体にいい働き」が隠されているのです。

アクは身を助く!? 春の味覚・山菜の秘められたパワー

山菜の「苦味」も大事な栄養素

 山菜は山野に自生する植物の総称で、特徴的な苦みやえぐみ、すなわちアクがあります。このアクには、抗酸化作用や新陳代謝を活発にするなど、さまざまな健康によい成分が含まれていることが近年の研究で明らかになってきました。

 食養生の格言に「春は苦みを盛れ」というものがあります。冬のあいだに蓄積した老廃物を山菜の苦みが体内から取り除くといわれており、古来青菜の少ない季節の貴重な栄養源でありました。そのアクの主成分が抗酸化作用を持つポリフェノールです。山菜によって異なりますが、ミネラルやビタミンも豊富に含みます。

豊富な栄養素をもつ山菜たち

フキ、フキノトウ

雌雄異株のキク科の多年草。早春は花のつぼみ、初夏からは茎や葉を食します。ルチンなどの抗酸化物質、フキノール酸、フキ酸、クロロゲン酸、ポリフェノールが豊富に含まれています。またフキノンという物質は抗アレルギー作用があるとされ、花粉症などアレルギー症状改善に用いるための研究が行われています。

ウド

成長すると茎が2メートルほどの太い円柱状になるウコギ科の多年草です。3月~5月に若い芽や柔らかい葉を食用にします。山で採れたヤマウドはアクも強いですが、香り高く、風味も濃厚です。栽培ものをヤマウドと称して出荷、販売されてもいます。

旅館・民宿などでの需要が多く地域振興に貢献しています。クロロゲン酸による強い抗酸化性とラジカル消去活性(ラジカル:活性酸素と同様にほかの物質を酸化させる)と鎮痛作用を持つことが知られています。

タラノメ

タラノキはウコギ科の低木で全国の山野に自生しています。若芽をタラノメと呼び、良質なタンパク質と脂質を含む「山のバター」と称されています。

タラノメにはサポニンの1種で食後の急激な血糖値の上昇を防ぐエラトサイドという物質が含まれていることが明らかになりました。古くから糖尿病防止の民間薬として用いられています。

ウルイ(4~6月)

湿気のある山林、谷間、湿地などに分布するユリ科の多年草。5〜7月ごろ、若芽や若い葉の葉柄を食用にし、ゆでて乾燥させた山かんぴょうと呼ばれるものは、保存が可能です。血圧を上げる物質を抑制する働きがあります。

※参考サイト:日本特用林産振興会「山菜 健康とのかかわりを科学する」

じょうずなアク抜きと最小限の調理でおいしくいただく

 アクは山菜パワーの源ではありますが、苦みが強すぎてそのままでは食用に適しない場合が多くあります。フキノトウ、タラノメ、コシアブラなどアクの弱い山菜は、湯通しするか、塩を入れたお湯でゆで、冷水にさらしてから水気を切ります。アクの強いワラビやゼンマイなどは、重曹か木の灰を加えてゆでます。そのまま冷まし、きれいに水洗いします。

 水溶性のビタミンやミネラル、ポリフェノール、うま味はゆでて水にさらすと失われてしまいがちです。アク抜き後の調理の加熱や処理は必要最小限にしましょう。てんぷらは揚げることでアクが抜けるのでアク抜き不要。山菜の魅力をあますことなく味わえるオススメの食べ方です。

 最近では栽培ものも増えていますが、その土地で採れた山菜の味はまた格別! もしかしたら意外と身近においしい山菜がなっているかもしれません。ほろ苦うまな春の味わい、探してみてはいかがでしょうか。

この記事を作った人

取材・文/塩川千尋(フリーライター)

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