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更新日:2018.09.03食トレンド

宮城県・川崎の風土を映す味わいを。【Fattoria AL FIORE】本格始動

「ぶどうの栽培から始めて、いずれはワイナリーを造ります」その言葉を目黒浩敬さん本人の口から聞いたのは、たしか2012年の秋頃だったろうか。川崎町本砂金の放り出された果樹園跡地にトスカーナの風景を重ね、「ここでなら苦労してもいい」と開拓を決意。2年後の2014年5月に初めての植樹を行い、同時に先達のワイナリーにて場所を借り、醸造技術をも研究した。そんな完成間もない【Fattoria AL FIORE】の情報をいち早くお届けします。

宮城県・川崎の風土を映す味わいを。【Fattoria AL FIORE】本格始動

 2016年、信頼する山形や山梨の農家が育てたぶどうを使った7本のワイン『NECO series(ネコシリーズ)』を完成させ、日本産ヴァン・ナチュールのマイルストーンとして注目を集めた。植樹から4年たった今、ぶどうの樹はすくすくと育っている。そして今年7月、【Fattoria AL FIORE】が完全なるワイナリーとして生きるために必要な最大にして最後のピースが揃った。

    2018年7月28日、旧支倉小学校が食と体験の観光交流施設として生まれ変わった

    2018年7月28日、旧支倉小学校が食と体験の観光交流施設として生まれ変わった

 ぶどう畑のある本砂金から車で10分ほど麓へ下りると、時計台のあるヨーロピアンな建物が見えてくる。旧支倉小学校だ。平成24年に廃校となったこの小学校が、新たな命を得た。校舎は、地域産品のショップやレストラン、体験交流施設などを擁する【イーレ!はせくら王国】としてオープン。その右手に立つ旧体育館が、まるごと【Fattoria AL FIORE】としてリノベーションされたのだ。

  • 体育館をそのまま利用。気温や湿度はコントロールせず、ここ川崎町の気候にまかせて醸造を行う。素材から手法、思想まで、すべて「あるがままに」醸すヴァン・ナチュール

    体育館をそのまま利用。気温や湿度はコントロールせず、ここ川崎町の気候にまかせて醸造を行う。素材から手法、思想まで、すべて「あるがままに」醸すヴァン・ナチュール

  • セラーの中はスタッフアテンドにより見学可能

    セラーの中はスタッフアテンドにより見学可能

 暖簾をくぐれば、まるで古い教会のようにやわらかい光の降るエントランス。右に進めば、体育館の床をそのまま活かしたフロアにワインショップが開け、広いセラーをガラス越しに眺めることができる。カウンターでは、その日おすすめのボトル5種類程度が抜栓され、【AL FIORE】お手製の小さなおつまみとともに試飲を楽しむことができる。

    レストランスペースは、かつて向山で営業していた時と同じ【AL FIORE】と名付けた。完全予約制(4名~)なので、電話にて相談を

    レストランスペースは、かつて向山で営業していた時と同じ【AL FIORE】と名付けた。完全予約制(4名~)なので、電話にて相談を

 自然豊かな川崎町の四季を凝縮したようなおつまみは、【AL FIORE】のイタリア料理のエッセンスとふるさと伝統の手法をミックスしたスタイルだ。実は、このフロアには大きな秘密がある。カウンターの背後にあるのは、ただの厨房ではない。向山で愛されたイタリア料理店【AL FIORE】を彷彿させる、瀟洒なレストランフロアが隠されているのだ。 

  • なぜか荘厳な雰囲気さえ漂うエントランス。体育館の名残のガラス窓が、教会のステンドグラスのよう

    なぜか荘厳な雰囲気さえ漂うエントランス。体育館の名残のガラス窓が、教会のステンドグラスのよう

  • テイスティングカウンター。試飲は30ml・300円~、60ml・600円~。プラス500円でおつまみも楽しめる。アルコール以外のオリジナルドリンクも用意

    テイスティングカウンター。試飲は30ml・300円~、60ml・600円~。プラス500円でおつまみも楽しめる。アルコール以外のオリジナルドリンクも用意

 「常にオープンしているレストランではなく、川崎という町や人、このワイナリーを愛してくれる人が〝おいしいものを食べながら、何か楽しいことをしよう〞という時に利用できるような場所にしたい、と思ってるんです」

 シェフである目黒さんの料理をフルコースで味わいながら、ふるさとの未来を思い描く。なんと豊かな空間だろう。

     醸造責任者である坂口礼奈さんと、顧問・目黒浩敬さん。「このワイナリーを起点に、川崎ならではの新たな食や文化が生まれたらすばらしいことですよね」。その萌芽は、すでに始まっている。

     醸造責任者である坂口礼奈さんと、顧問・目黒浩敬さん。「このワイナリーを起点に、川崎ならではの新たな食や文化が生まれたらすばらしいことですよね」。その萌芽は、すでに始まっている。

 醸造のためのスペースは、体育館の原型をほぼそのまま活かして構成。スタンダードなステンレスのタンクはもちろん、陶製のアンフォラや木樽などが並び、彼らのやりたいことがどれだけ幅広く多彩であるかがよく分かる。

     宮城県内限定で販売される『かもしかワイン』(2,800円)。エチケットも川崎町の画家・佐藤 牧さんが描いたもの。地元・川崎町の素材を使った料理とぜひ合わせたい

     宮城県内限定で販売される『かもしかワイン』(2,800円)。エチケットも川崎町の画家・佐藤 牧さんが描いたもの。地元・川崎町の素材を使った料理とぜひ合わせたい

 醸造責任者である坂口礼奈さんは、完成間近のスペースを前にこう語る。

 「自社栽培のぶどうは、200〜300㎏の収穫が見込めますから、280本程度を目標に醸造する予定です。試してみたいことは山ほどある。最初からすべてがうまくいくとは思わないけれど、失敗から得るものも、きっとたくさんある。成功も失敗も、ひとつひとつのすべてが、これからの私たちにとってとても大切なことですから」

 さらに進化を続ける“Fattoria AL FIORE”の活動は、今後も目が離せない。

【Fattoria AL FIORE】

  • 住所:宮城県柴田郡川崎町支倉塩沢9
    電話:0224-87-6896
    時間:11:00~17:00
    定休日:木曜日

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写真/Office ikegamies 原稿/ナルトプロダクツ

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