【チャカン食堂】新大久保で韓国人こそが通う、釜山式豚足のウマい店
第3次韓流に沸くコリアンタウンの新大久保において、韓国人こそがわざわざ通う店がある。得意とするのは釜山式の豚足。釜山出身のオーナーは「いちばん自信を持って出せるメニュー」と胸を張る。釜山をよく知る人なら泣いて喜ぶ、あの「冷製豚足」があるのも嬉しい。
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コリアンタウンの新大久保に韓国人こそが通う店がある
日本では珍しい釜山式の豚足を看板メニューとしている
飴色に煮込んだ豚足に加え、郷土料理の冷製豚足も用意
新大久保の真価は路地裏に
チャカンは味やサービスのよさ、値段の手ごろさを意味
コリアンタウンとして知られる東京、新大久保。数ある韓国料理の中でも、この店をご存知であればかなりの通と言えましょう。2017年6月にオープンした【チャカン食堂】は、路地裏にあって韓国人が通い詰める、あるいは韓国を年に何度も訪れるようなヘビーリピーターがハマってしまう玄人好みのお店です。見た目こそ新大久保によくある韓国家庭料理店ですが、メニューを見るとこれがちょっと普通ではないのです。
新大久保でも数々の人気店を生み出してきた朴正湖社長
店を開いた朴正湖(パク・チョンホ)社長は、1997年の来日以降、数多くの韓国料理店を手がけてきた大ベテラン。【チャカン食堂】を開くにあたっても、ちょっと変わったコンセプトを掲げていました。「まず韓国人が来る店を作ろうと思ったんですよ。韓国人から評価を得られれば日本人は必ず来る。そう思って流行の料理にはこだわらず、自分がいちばん自信を持って出せるメニューで勝負することにしました」
港町の釜山には魚介料理のみならず数多くの名物がある
キーワードのひとつにあげたのは、朴社長の故郷でもある「釜山」(プサン)の料理。釜山といえば韓国を代表する港町であり、またソウルに次ぐ第2の都市として、ソウルとはまた違った食文化を育んでいます。韓国料理店の集まる新大久保においても、郷土料理を前面に掲げる店はまだまだ少ないのが現状。釜山料理で勝負に出るというのは、かなり珍しいコンセプトと言えます。
豚足と茹で豚の合い盛り『ゾッボセット』3,680円
その勝負をかけた釜山料理というのが韓国語で『チョッパル』と呼ばれる豚足の煮付け。釜山は港町だけあって魚介料理がクローズアップされがちですが、中心街の「南浦洞」(ナムポドン)地区に行くと豚足の専門店ばかりが集まる一画があります。看板メニューの『王豚足』小サイズ1,980円~、に加え、豚のバラ肉を煮込んだ『ポッサム』(茹で豚)や、『スンデ』(腸詰め)と一緒に盛り付けたセットも人気です。
葉野菜に包んで食べることによってさっぱりと味わえる
豚足といっても足先だけでなく、肉づきのよいところまで一緒に煮込むのが韓国式。甘みのある醤油ダレをいっぱいに吸い込んだ豚足は、むっちりとしたゼラチン質の部位と、しっとりとした赤身部位が混ざりあって、なんとも食べごたえのある仕上がりです。食べ方としては、サンチュ、エゴマの葉に包むのがもっともオーソドックスなスタイル。好みで刻んだ青唐辛子やスライスニンニクを加えつつ、「サムジャン」と呼ばれる味噌を載せてかぶりつきます。
いろいろな食べ方を試して自分のお気に入りを探したい
あるいはエゴマの葉の醤油漬け、白菜漬け、薄切りにした大根漬け、辛味ダレで和えた大根などが用意されますので、これらを葉野菜と組み合わせながら食べてもおいしいです。また、写真奥の中央にあるアミの塩辛も豚足を食べるのに欠かせないもの。これをタレがわりとして、刺身のようにちょんとつけて食べると、素材や味付けのよさをストレートに楽しめます。継ぎ足しで使うという煮汁のうまさまで、ぜひしっかりと見極めてください。
冷製サラダ感覚のフレッシュな味わいを楽しめる『くらげ豚足』3,500円
そして、もうひとつ。釜山ならではの豚足がこちら。生野菜やクラゲと一緒に、マスタードソースで和えて食べる『くらげ豚足』です。韓国語では「ネンチェチョッパル」と呼び、直訳では「冷製豚足」を意味します。実のところ豚足自体は韓国のどの地域でも食べられるのですが、「ネンチェチョッパル」は釜山発祥であり、南浦洞地区の専門店通りが本場です。釜山料理として豚足をチョイスするだけでなく、冷製豚足もしっかり用意するあたりに、「わかってるね!」と常連客は歓喜するのです。
豚肉やモヤシなどの具が入る『おからチヂミ』1,480円
日によって『王豚足』を頼むか、『くらげ豚足』を頼むかは悩みどころですが、それでもサイドメニューとして外せないのが『おからチヂミ』です。朴社長が懇意にする豆腐店から直接仕入れたおからを使用し、香ばしくも甘味のあるチヂミに仕上げています。
ヒリリとした辛さがつい後を引く『唐辛子チャプチェ』1,380円
韓国家庭料理店では定番の『チャプチェ(春雨炒め)』1,280円 もぜひ頼んで欲しい一品。一般的な『チャプチェ』と比べて、甘さがずいぶん抑えられており、うま味の輪郭を強調するキリッと引き締まった味わいです。好きな方であれば青唐辛子を加えた『唐辛子チャプチェ』もオススメ。
総座席数は24席。週末はもちろん平日も予約を推奨
オープンから1年以上が経過しましたが、朴社長の狙い通りに平日は約8割が韓国人の常連客で埋まり、土日はうってかわってウワサを聞きつけた日本人がやってくるそうです。初めて行くなら土日を狙うのもいいですし、現地さながらの雰囲気を楽しんでこそ、という方は平日をめがけてみてください。もちろんどちらの曜日でも料理の美味しさ、そして朴社長のこだわりっぷりに変わりはありません。
*記事内の価格はすべて消費税込み。
アクセス:JR「新大久保」駅から徒歩4分
営業時間:11:00~24:00(L.O.23:00)
定休日:無休
八田靖史(フリーライター)
慶尚北道広報大使、慶尚北道栄州市広報大使。コリアン・フード・コラムニスト。2001年より雑誌、新聞、WEBで執筆開始。トークイベントや講演、韓国グルメツアーのプロデュース。近著に「イラストでわかる はじめてのハングル」(高橋書店)。WEBサイト「韓食生活」を運営。
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