女性と行きたいラーメン屋【パパパパパイン/町田】| サニーデイ・サービス田中貴 Bグルマン部 #15
“B級グルメ美食家”たちが集い、愛するお店を熱く語る「ヒトサラ Bグルマン部」。今回お店を紹介するのは、Bグルマン部のラーメン担当「サニーデイ・サービス」のベーシスト、田中貴さん。テーマは「女性と行きたいお店」でお願いしたところ、何やら不穏な空気が──。
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ロックバンド「サニーデイ・サービス」のベーシスト。ツアーの合間、全国の名店を食べ歩くうちに、地域ごとのラーメンの多様性に魅せられる。現在、ラーメン本『Ra:』の出版やグルメ雑誌の連載、ラーメン番組のMC等、グルメの分野でも各メディアで活躍している。
Bグルマン部 今回のテーマ
「女性と行きたいB級グルメ店 ラーメン編」
まったく、ヒトサラ編集者は、私を誰だと思っているのだ。今回のテーマは「女性と行きたいお店」だそうな。
私といえば、知る人ぞ知る“モテない”ミュージシャン。フジテレビ「アウト×デラックス」に出演した際も、そもそものテーマは「ラーメンが好きすぎるミュージシャン」みたいな感じだったのだが、いざトークが始まると、マツコさんとお互い十数年間恋人がいないという話で意気投合し、趣旨が変わってしまったという過去もあるほどだ。
デートなんぞ、この十数年間で数える程度しかしたことがない。そんな私が選ぶ、デートで行きたいお店。何の説得力もないが、いちおう紹介させていただく。
彼女いない歴15年の中年男が妄想して選んだ
女性と行きたいラーメン店とは……
はっきりいって、デートにラーメンは向いていない。カウンターに横並びで、注文から食べ終わるまで10分程度。麺がのびてしまうので、ゆっくり食べるわけにもいかず、食べ終わったら談笑する間もなく出なければいけない。そんなデートは悲しすぎる。かといって、麺料理も美味しい街の中華屋さん、一品料理も豊富な、飲めるラーメン屋さんを紹介するのは、このテーマとはちょっと違う気がする。
悩んだ挙句に選んだのはパイナップル塩ラーメンの店【パパパパパイン】。女性から「あそこって美味しんですか?」と聞かれた数が最も多い店である。
明るい。ちょっとカワイイ。清潔感もバッチリだ。ここで安心することによって、ラーメンを食べた時のギャップはさらに大きくなる
テレビや雑誌などメディアに出ることも多いので、気になる人が多いのであろう。
2011年に創業。西荻窪にあった頃は、狭くて怪しげな店だったので、なかなか女性を連れて行くには気が引けたが、昨年末に町田に移転して大きく様変わりした。
駅から直結のショッピングモール内の明るい店舗はトロピカルな内装で、逆にワシらラーメンマニアが入りづらくなってしまった感すらあるキャッチーさ。
開店から7年、徐々にメニューが増えている“恐怖”。豚増し、野菜増し、ニンニク増しといえば【ラーメン二郎】。パイン増しといえば【パパパパパイン】だ
ラーメン屋なので、入り口で食券を購入せねばならない。ここで慌ててはみっともないし、後ろの客にも迷惑をかけてしまう。デートには下調べが重要だ。中2の頃に読んでたホットドッグ・プレスにもそんなことが書いてあった気がする。女性には定番の『パイナップル塩ラーメン』をおすすめしよう。さりげなく、トッピングの『味玉』の券も買っておくことをお忘れなく。
そして自分は、【パパパパパイン】の公式Twitterで事前に確認しておいた限定メニューをチョイス。相手がお酒も嗜むなら、『パイナップルエール(フルーツビール)』、『パイナップルワイン』で乾杯するのもデートらしくていい。
よく集めたと感心するグッズたち。雑貨屋でパイナップルの小物を見つけると、思わず買って店主にあげたくなってしまう。なんて感情だ
黄色いコップや、パイナップルの形をした箸立て、調味料入れなど、パインつながりのグッズを探しっこしてると、パイナップル柄のアロハを着た店員さんからラーメンが提供される。楽しい。ちょっとしたアミューズメント感もあるじゃないか。
想像している以上の“黄色”
そして味のイメージができない“黄色”
『パイナップル塩ラーメン』750円(税込)に、『パイナップル味付玉子』120円(税込)をトッピング
【パパパパパイン】のロゴが入った丼には、塩ラーメンらしく澄んだスープが。具材は、チャーシュー、青菜、海苔、糸唐辛子とオーソドックスなものに、缶詰のパイナップルがトッピング。ここで彼女の『パイナップル塩ラーメン』に『味玉』を追加した意味がわかる。ひときわ目を惹く真っ黄色の玉子。これがあると無いとじゃ大違い。
「ナニコレ!? カワイイ!」となるはずだ(中二レベルの推測)。つかみはオッケー。やはり大事なのは下調べなのである。
トッピングの『パイナップル味付玉子』はパイナップルと一緒に煮ている。味はもちろん、しっかりパイナップル味
そして、問題の味だ。スープを口にした彼女は、何ともいえない複雑な表情をするに違いない。実際にこのラーメン、表現のしようもなく、まさにパイナップル味のラーメンなのである。ここで、ラーメン屋デートでの定番、うんちく披露タイムである。
「スープには豚骨や鶏を使わず、煮干や昆布など魚介系オンリーなんだよね。それに、スープ全体に対し4分の1のパイナップルジュースが入ってるんだ」
おそらく話は聞いていない。
しっかりとしたパイナップル味。でも、ちゃんと塩ラーメン。なんとなく、それなりに、おいしく“食べられる”。きっと彼女は、半笑いのまま手を休めることなく食べ続けるだろう。
この日の限定は、【パパパパパイン】史上でも迷作といわれる一杯
さて、もう一杯の限定のメニューだ。過去に、『キキキキキウイ』、『スススススイカ』、『メメメメメロン』などのメニューを繰り出してきた倉田店主。季節、気まぐれ、思いつきであらゆる素材をラーメンにぶち込んでくる。
この日の限定ラーメン『パパパパパーシモン(柿ラーメン)』950円(税込)には、柿を揚げた“柿フライ”、柿のペースト、柿の種が入っている。柿の甘味と豚骨醤油スープのコクが意外にも合う
もちろん、ただ入れているわけではなく、スープやタレなど、素材に合ったものをその都度作り上げる。公式Twitterでチェックしておいたスペックを披露しながら、彼女とシェアして食べる。食べ手を半笑いにさせてくれる“絶妙に微妙”な味に、彼女はきっとこういうだろう。
「こんなの初めて……」
この不思議な感覚が妙に後を引き、実際に僕は五回ほど店を訪れている。ちなみに、パイナップル柄アロハの倉田店主は、普段は一切食べないそう。
何度も訪れる僕に「よく食べられますね」と屈託のない笑顔で微笑んでくる変人。しかし、この倉田店主、高田馬場の名店【渡なべ】で修行した、正統派ラーメン職人なのである。
目が据わっている。常人ではない証拠だ。パクりが主流となってしまっている現在のラーメン界において、オリジナリティーを追求し定番化させた倉田店主。僕は常々彼を天才と評している
一流の技術を持った料理人が、なぜパイナップルラーメンを作ってるのか聞いてみると、「誰もやってないから面白いじゃないですか」との答え。元々パイナップルが好きなわけでもなく、パイナップルを選んだのも、特に意味はなかったそう。
以前、この店にはポイントカードがあり、10点集めるとメニューには存在しない、パイナップルの入らない純粋な塩ラーメンが一杯無料で食べられるという特典があった。名店出身の店主が作る塩ラーメンだ。確かに気になる。
しかし、ポイントを貯めた者の殆どが、結局パイナップルラーメンを頼んだという。移り変わりが激しい東京のラーメン界において、創業7年を迎えた【パパパパパイン】。意味がなかったはずのものが、完全に必要とされているのである。
お店の外にはパイナップル型の「顔ハメ看板」が。彼女とふざけながら写真を撮り合う。想像しただけで楽しすぎる。一度でいいから、そんな経験してみたい
あのラーメンは一体なんだったのだろう。店を後にしてからも、彼女の心にはなんともいえない感情が続く。なぜ彼は、私にこの不思議なラーメンを食べさせたのだろう。頭の中のクエスチョンマークは時が経つごとに大きくなる。
もう一度食べて確かめたい。いや、あの変なラーメンを食べたいのだろうか、彼に会いたいのだろうか……。
恒例の、バレンタイン限定『カカカカカカオ(チョコレートパイナップル担々麺)』
2019年2月。彼女からデートの誘いがあるはずだ。待ち合わせ場所は町田駅。彼女がリードして向かった先は【パパパパパイン】。
彼女は手慣れた感じで僕の分まで食券を買い席に着く。甘い香りがたちこめる店内で、なぜか彼女は何も喋らない。出てきたラーメンは『カカカカカカオ(チョコレートパイナップル担々麺)』。例年の定番化したバレンタイン限定メニューは、【パパパパパイン】の中で最も訳のわからない味。
半笑いどころか爆笑しながら唯一無二のラーメンを分かち合い、二人の距離は一気に縮まるのである。
バレンタイン限定のチョコレートシリーズ『カカカカカカオ(チョコレート油そば)』。僕は過去に三度食べにいっている。もちろん一人でだ
【パパパパパイン】
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電話:042-709-3987
住所:東京都町田市原町田3-1-4 町田ターミナルプラザ 2F
アクセス:JR「町田」駅ターミナル側出口から徒歩3分、小田急線「町田」駅から徒歩8分
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営業時間:11:00~15:00、18:00~21:00
定休日:水曜日 -
バックナンバー サニーデイ・サービス CDリリース情報
サニーデイ・サービスのクリスマスソング「Christmas of Love」が、2018年11月28日にリリース。各サブスクリプション・サービスにて配信中。
田中 貴(サニーデイ・サービス)
ロックバンド「サニーデイ・サービス」のベーシスト。ツアーの合間、全国の名店を食べ歩くうちに、地域ごとのラーメンの多様性に魅せられる。現在、ラーメン本『Ra:』の出版やグルメ雑誌の連載、ラーメン番組のMC等、グルメの分野でも各メディアで活躍している。
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