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更新日:2023.10.20食トレンド デート・会食

神戸の人気イタリア料理店が、木場へ! 新生【T.N(ティーエヌ)】に注目

神戸で人気を博した【リストランテ・ペペ】(現・大阪【イル ペペ】)と、代官山の名店【リストランテASO】で修行した中野 通シェフが、自身のイニシャルを冠してオープンした【T.N ristorantino della strada(ティーエヌ リストランティーノ デラ ストラーダ)】。神戸の住宅街ながら長らく人気を博し、2023年5月、東京・木場へ移転し、新生【T.N】が誕生しました。関西・関東における最上級のイタリア料理に向き合った中野シェフならではの、“だし感のある料理”と、新たな食材への挑戦に迫ります。

TN,木場

神戸の住宅街から東京・木場へ! 早くも注目を集めるワケとは

    TN

    東京メトロ東西線「木場駅」徒歩1分の【T.N(ティーエヌ)】

東京は江東区木場。2023年5月のオープン当初よりコース料理のみ。
ともすると強気なスタイルに見えますが、歴としたキャリアと人気を兼ね備えているのが、イタリア料理【T.N】です。

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    ランチは8,800円、13,200円の2コース。ディナーは13,200円、22,000円の2コースのみ。すべて税込

オーナーシェフの中野通さんは、神戸市西宮で語り継がれる【リストランテ・ペペ】(現・大阪北新地【イル ペペ】)の平井利男シェフのもとイタリア料理を基礎から学び、東京・代官山の名店【リストランテASO】での研鑽を経て、2015年に神戸で自身の店【T.N】を開店。
西宮市内の住宅街にひっそりと構えるも常に人気イタリア料理店として名声を誇り、2023年5月に満を持して東京・木場へ移転、新生【T.N】が誕生しました。

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    店内は、テーブル12席、個室4席の計16席

「もともと17歳でアルバイトとして入った神戸市内のホテルで、洋食やフレンチをひと通りやらせてもらっていて、いつか街の洋食屋さんを開きたいと思っていたんですが、休みの日に同じ神戸市内の【リストランテ・ペペ】を訪れて、『こんなにおいしいお店があるんだ!』と衝撃を受け、イタリア料理の道を進むことになりました」

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    1981年、徳島県生まれ。17歳から料理の道を志したオーナーシェフの中野 通(なかの とおる)さん

初めはスタッフ募集はしていなかったものの、『いつかここで働きたい』という想いで根気よく通い、3年間【リストランテ・ペペ】平井シェフの元で腕を磨きます。

シェフがプロデュースする別の店舗の料理長として活躍するなど、関西のイタリアン街道を猛進するなか、2008年に出版された『ミシュランガイド』初の東京版が、更なる飛躍のきっかけに。

「イタリア料理で初めて二つ星を獲得したのが東京・代官山の【リストランテASO】で、とりあえず面接へ向かい、翌週にはキッチンに入っていましたね(笑)。当時はミシュランの影響もありましたし、毎日ランチとディナーは満席、さらに毎週末のように結婚式の披露宴などもあって、本当に鍛えられました」

関東と関西では、だしをとる水も、パスタを茹でる水も違う!?

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    【T.N】という店名には、「自身のアイデンティティを料理で表現したい」という想いから、イニシャルを冠したそう

クラシックながら進取の気風に富んだ【ASO】のキッチンで3年半の武者修行を終え、神戸で独立準備を進める際、関東と関西の料理に大きな違いを感じたと言います。

「水道水に関していうと、東京は硬水、関西は軟水という大きな違いがありますよね。だしをとる時は基本、軟水でとると旨みが出やすいため、東京でだしをとるときは軟水のミネラルウォーターを使用しますし、逆にパスタを茹でる際は硬水を使うことで茹で汁が濁らないなど、地域によってこだわる部分も変えていきました。もともと師匠として基本を教わった平井シェフは和の食材や和食のテクニックをイタリアンに応用する先駆者だったので、神戸で開業した【T.N】でも、昆布や鰹などのだしを多用することとなりました」

東京で習得した最旬のテクニックをもって、関西で培っただし感のあるイタリア料理を展開していった中野さん。神戸【T.N】時代から、前菜の魚やパスタの海老は昆布締めに、アクアパッツァは鰹だしで……と、どこかに和の要素を取り入れることを意識していくうちに、“ほかのお店では食べられない”イタリア料理として人気店に。

そんな神戸時代から人気のメニューを、東京で仕入れるようになった「プレミアムヤシオマス」で仕立てたメニューが、『プレミアムヤシオマス いくら 蓮根』です。

    TN,プレミアムヤシオマス

    『プレミアムヤシオマス いくら 蓮根』(13,200円以上のコースから)

「神戸では、タスマニアサーモンなどを使用していたのですが、東京で初めて知った栃木県の『プレミアムヤシオマス』は、大型ニジマス・ヤシオマスの中でも、脂肪部分に融点の低いオレイン酸を多く含んでいて、肉質がとても柔らかいんです。生でも焼いてもおいしいので、両方を味わえるように、マリネした後に皮目を香ばしく焼いています。ソースはいくらを乳化させてレモンで調味しているので、義理の親子とでもいうんでしょうか(笑)、間違いなく合うと思います」

    TN,中野通

    「東京に移転して初めて卸してもらえた東北や関東の食材で、新たな料理に挑戦するのが楽しみ」と中野さん

淡水で育つ魚は塩分がないため、海水で育つ魚と比べ、自ら脱水できないのも特徴。ハーブと塩を合わせたトレハ塩を振ってマリネすることで水分を抜きつつ、同時にトレハ塩に含まれるトレハロース(自然甘味料)の保水作用によって、しっとり感も増していきます。

皮目はパリッと、身はまさに最上級のしっとり。脂はしつこさがなく、ほんのりとした甘みも感じます。こちらも東京に来てから採用したという江戸前ハーブや、バジルオイル、梅肉のタプナードで和えた蓮根が加わり、爽やかな余韻も心地よい一皿。

お次も、神戸時代からお客様に人気の料理『ポルチーニ ペリゴール栗 ニョッキ』。

    TN,ポルチーニ,ペリゴール栗,ニョッキ

    秋限定のスペシャリテ『ポルチーニ ペリゴール栗 ニョッキ』。(13,200円のコースより)

「フランス産のペリゴール栗の大きさに、ニョッキの大きさを合わせることで、より食感の違いを楽しめる仕組みになっています。一般的にパスタは麺と具材を一緒に食べるものですが、これに関しては“素材を味わう”ためのパスタ。全体にポルチーニソースが絡まるなか、栗とニョッキを交互に別々で食べていただくことで、ニョッキも一つの食材として楽しんでいただけると思います」

黒胡椒の香りを移した牛乳ベースのきめ細かな泡が、口当たりを軽やかにするだけでなく、濃厚なポルチーニソースも飽きのこない味わいに。

    TN,尾崎牛,クロケッタ,トリュフ

    『尾崎牛 クロケッタ トリュフ』(22,000円のコースより)。この日は尾崎牛のイチボを使用

さらに、【T.N】を語るうえで欠かせないのが、「尾崎牛」を使用した肉料理です。

「尾崎牛は赤身がとてもおいしいので、赤身のモモ肉を中心に、ランプやシンタマなども登場します。長時間焼くと肉がパサパサするため、基本はオイルバスなどでギリギリの温度まで低温調理し、表面をサッと焼き固めるように炭火を用いて“強火の近火”で炙るくらいに仕上げるのがこだわりです。付け合わせは尾崎牛の筋部分を赤ワイン煮込みにし、コロッケに仕立てたものと、フランス産ブリーチーズのクリーム、トップに季節のトリュフを添えました。赤ワインソースはお好みで」

    TN,尾崎牛

    宮崎県のブランド牛「尾崎牛」。世界で高い評価を受ける以前から中野さんは注目し、メイン料理に採用していたそう

近火ゆえ短時間で炭の香りをまとい、肉肉しい香ばしさを漂わせるものの、芯まで柔らかくしっとりとしたレア。この香ばしさを純粋に味わってもらうため、肉に直接、胡椒をふらないというのも中野さんのこだわり。

だし感のあるイタリア料理に合わせて、シェフ自らペアリング

    ワイン,TN

    約60種類を揃えるワインリストから、ランチは5種で5,500円、ディナーは7種か9種で8,800円からと、比較的リーズナブルな価格帯で幅広いワインペアリングを楽しむことができる

左から、イタリア・プーリア州からのプリミティーヴォを100%使用して仕込まれた、辛口のロゼ「aka」。赤サンゴを彷彿とさせる鮮やかな色合い。鶏のローストや、だしベースのソースを使った優しいテイストの肉料理にセット。

中左は、フランス・ロワール地方の白「ドメーヌ デュ サルヴァ ドゥレイユ 2022シュベルニー」。シャルドネ16%、ソービニオンが84%で、ライチやアカシアの花、熟したレモンなどを感じるフレッシュでフルーティーな味わい。海老などの魚介系の料理や、ハーブを使用した料理に。

中右は、イタリア・ピエモンテで造られる赤ワイン「ムンディ・バローロ 2018」。標高300〜400mに植樹された樹齢約30年のぶどう「ネッビオーロ」100%で、トリュフ料理や、しっかりした炭火焼きステーキに合わせて、ソースのように流し込むのがおすすめ。

右は、フランチャコルタの名手「サン クリストーフォロ」が造るスーパー辛口の泡。極上の喉越しが、魚介系やチーズを使用した前菜にピッタリ。季節によってはシャンパンも登場する。

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    ステーキには、深い味わいの肉料理と相性の良い、「ムンディ・バローロ 2018」。ネッビオーロというぶどう品種100%で、土っぽい香りを持ち、トリュフの土っぽい香りと同調するためすこぶる相性が良い

ワインは、その日の料理の構成によって、中野さん自らペアリング。

「だし感を生かしたイタリア料理に合うよう、泡から白・赤・オレンジ・ロゼ・デザートワインまで、旨みのあるものを中心に幅広くセレクトしています。僕の料理は、味を引き出すために塩をふるのではなく、フュメ・ド・ポワソン(フランス料理の魚介ソース)を作るときも昆布や鰹を使うなど、食材とだしから出る旨みの相乗効果で味を引き出すよう心がけているので、より日本人に馴染みやすい味わいになるのかもしれません」

「旨みのあるイタリア料理」と評価するお客さまも多いという、関西で鍛えられただし感のある料理。東京で出合った新たな食材とともに、新境地へ挑む中野シェフにこれからも注目です。

この記事を作った人

撮影/今井 裕治 取材・文/藤井 存希(フリーライター)

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