新宿ゴールデン街日記 Vol.2
新宿ゴールデン街にレモンサワー専門店【THE OPEN BOOK】をオープンした田中開さんがこの街の景色や日常を綴る連載コラム。今回は、作家・田中小実昌氏の孫にあたる彼とゴールデン街の始まりについて。
客として通いはじめたゴールデン街
新宿ゴールデン街を舞台に書くわけなのだが、おそらく多くのかたは、新宿ゴールデン街ときいても、あのごちゃごちゃした風景が朧げに浮かぶぐらいで、大半の人たちは、あまりよく知らないんだろうと思う。
僕は説明が下手で、ここで変に誤解を招くのがイヤなので、詳しくはwikipediaでも見てほしいというのが本音である。簡単に言ってしまえば、新宿区歌舞伎町を過ぎたところにある、3坪のほどの飲み屋が200軒ほど密集した地域なんて認識でいいのだと思う。
ポイントは、店が狭いと、人との距離も狭い(正しくは、近く)なることで、店員さんと話す・知らない人と話をするなんてのは、よくあることだ。
通いはじめた時期は、酒に飲まれる日々の連続で、言ってしまえば、怠惰な二日酔いの日々なのだが、どうにもそれだけではすまないような言い訳がほしい、人との交流を楽しんだなんて感じに。とは言っても、二日酔いで明くる日は使いものにならず、寝てばっかりの1日が多かった。だから、一昨年の僕は、普通の人より1年が短かった。
通いはじめた、というが、なぜ通うようになったのかと、たまに聞かれる。通っている、なんて言葉が実はよくなくて、そんな学校や会社のように、定期的に行っていたつもりはなくて、いつしかそうなってしまったから、通っている、という言葉になったのだ。しつこいが、僕としては、通ってるつもりはなくて、ただ家に帰るように、引き寄せられるように、飲みにいっていた。
ただ、祖父が仲良かったゴールデン街のお店には、大学生のときから、母とたまに顔を出していたし、そのうちに、出不精な母は、僕にお金だけ渡して代わりに行けと頼まれたから、喜んで友だちと飲みに行っていたのは確かだ。タダだし、何より、祖父の手前、どこのお店も僕には良くしてくれた。そんな居心地の良さはあったのだろう。
客として通っていたら、そのうちにバイトしていた、というのはよくある話で、僕もそうだった。カウンターの中でもお酒は好きに飲んでいいし、さらにバイト代も貰えるというなら、こんないい話はない。
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店の並びから推測するに、1970年代。ゴールデン街を歩く祖父の写真
田中 開 プロフィール
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タナカ カイ
1991年東京都出身。早稲田大学基幹理工学部卒業、現在は同大学院に在籍中。祖父はゴールデン街をこよなく愛する、直木賞作家の田中小実昌氏。その縁もあり、この街にレモンサワー専門店【THE OPEN BOOK】をオープンする。
この記事を作った人
田中開
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