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更新日:2017.06.09グルメラボ

初めて食べた人をリスペクトせざるを得ない、見た目が“アレ”な食べ物

珍味と呼ばれる食べ物は世の中にたくさん存在しますが、なかには「なんでコレを食べようと思ったんだろう?」という食材も多く存在します。一体どんな経緯で食べられるようになったのか、探ってみたいと思います。

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奈良時代から現代まで愛され続ける高級珍味「ナマコ」

 グロテスクな見かけや、生体によっては攻撃を受けると内臓を出して反撃するという生態が苦手だったり、海中でナマコを踏んだ時の感触がトラウマになってしまった、という人も少なくないのではないでしょうか? 

 なかなか「食べてみよう!」とは思えない見かけのナマコですが、かの夏目漱石が『吾輩は猫である』のなかで「はじめて海鼠(ナマコ)を食い出せる人は其胆力に於いて敬すべく」と書いているほどです。

 しかし、食材としての歴史は古く、平城京へ献上したことを示す木簡が見つかっており、どうやら日本人は奈良時代にはすでにナマコを食していたようです。712年編纂の『古事記』の中には「海鼠」の記述があり、当時は「コ」と読んでいました。ナマコとは「生のコ」という意味だったようで、ナマコの腸の塩漬け、コノワタという名称に当時の呼び名が残っています。

 江戸時代には乾燥ナマコをすり下ろして漢方薬として用い、中国にも輸出していました。本朝食鑑、和漢三才図会、日本山海名産図会などの事典にも掲載されるほどポピュラーな食材となっていたようです。

「エスカルゴ」は、人類が最初に口にした動物のひとつだった

 ヨーロッパで見た目がアレな食べ物の代表格といえば、エスカルゴです。先史時代のエスカルゴの殻の「貝塚」が残っていることから、人間が最初に食べた動物のひとつだろうと言われています。

 現在はフランス・ブルゴーニュの郷土食として有名ですが、ヨーロッパ全土で食されており、調理されるようになったのは古代ローマ帝国です。ローマ人は美食家で、エスカルゴの養殖もこの時代に行われるようになりました。中世ではカトリック教徒にとって「肉食絶ち」の金曜日に食べてよいごちそうでした。

 ちなみに、中国では古くからエスカルゴを漢方薬に用いたり、日本ではエスカルゴではありませんが、タニシなどカタツムリ類を食べる習慣がありました。

腐ってる? と思いきや食べたらおいしかった糸引き納豆

 日本人にとっては身近な健康食・納豆ですが、独特のニオイと糸を引いた豆は、未知の状態で遭遇したら「腐っている」と思われても無理はありません。実際に海外からはかなりのゲテモノ料理として認識されているようです。

 本来、納豆には種類が2種類あり、1つは中国で「鼓」(シ)と呼ばれる麹菌で発酵させた麹菌納豆で、日本では奈良時代に本格的に作られるようになりました。ちなみに、大徳寺納豆や浜納豆はこの一種です。

 現在、一般に納豆と呼ばれているのは、納豆菌で発酵させた糸引き納豆です。糸引き納豆の起源は未解明ですが、煮豆を放置したら偶然食べられる納豆のようなものができて、それぞれの地域で独自に進化して現在に至ったという説、中国南部雲南省付近から発生し、インドネシア、ヒマラヤ、日本まで分布したという説があります。納豆が初めて文献に現れたのは、11世紀半ば藤原明衡によって書かれた『新猿楽記』ですが、麹菌なのか糸引きなのかは両説あるようです。

 また、最初に食べた人ではないですが、納豆とゆかりが深いのは平安時代後期の武将・源義家です。東北地方各地には「義家が納豆を発見した」という伝承が数多く残っています。おおまかには「煮豆をワラに包んで行軍していたら発酵した」というストーリーです。ただ、義家の奥州出兵前から糸引き納豆はあり、どうやら納豆がまだ知られていなかった東北地方に義家が納豆を伝えたのではないか、といわれています。

まとめ

 現在、われわれが普通に食べている食材も、最初に食べた人が現れるまでは「珍妙な生物」だったものも多く存在しています。いまおいしいものにありつけるのも、先人たちの好奇心、とりあえず食べてみる精神のおかげといえます。食わず嫌いせずなんでも食べてみると、新たなすばらしい味覚の世界が広がるかもしれません。

この記事を作った人

取材・文/塩川千尋(フリーライター)

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