あなたが食べているものは、野菜? それとも果物?
私たちが普段何気なく口にしている野菜や果物ですが、どんな定義で区別しているのか、改めて聞かれると答えに詰まってしまう人も多いのではないでしょうか。実は、地域の行政や文化が異なると分類が異なるものも少なからず存在しているのです。
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農林水産省ではどのように分類しているのか
野菜と果物のはざまに揺れる「果実的野菜」
アメリカでのトマトにまつわる驚きの法律とは
日本の農林水産省の見解
農林水産省の公式ホームページによると、野菜と果物の分類についてのはっきりとした定義はないものの、生産分野では次の特徴を持つものが野菜とされています。
①田畑で栽培されるもの(山菜は野菜に分別されることが多い)
②副食物(おかず)であること
③加工を前提としないこと(コンニャクイモは野菜だがコンニャク自体は野菜としない)
④草本性(木になるモノではないもの)であること
つまり、実のなる永年作物の木は果樹として分類し、そこからとれた果実は果物と分類しているのです。このルールに則るとイチゴやメロン、スイカなどは野菜に分類されてしまいますが、一般的に果物と認識されているものは「果実的野菜」として扱うこととしているのです。
「果実的野菜」と「野菜的果実」とは
「果実的野菜」は先の章に挙げたほかにもあります。バナナやパイナップルは木になるイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実は草本性の植物に実をつけるため、原則的には野菜に分類されてしまうのです。そうは言ってもバナナやパイナップルは一般的には果物ですので、「果実的野菜」ということになるのです。
逆に、トマトやナス、アボカドは木本性の植物になる果実のため原則的には果物に当たりますが、野菜として扱われることが多いため「野菜的果実」と呼ばれます。
ちなみにパパイヤは果樹に実をつけますが、実が青いうちは調理用パパイヤとして漬物や炒め物などで野菜として活用されており、完熟になったものは果物として扱われます。このように、収穫のタイミングによって野菜と果物の両方の側面を持つものもあるのです。
トマトはどちらか、定義と法律で意見が真っ二つ
トマトは日本でも「野菜的果実」というあいまいな分類がされていますが、アメリカでも少々ややこしい状況に置かれているのだとか。RIGBY社が出版した本によると、アメリカでは果物の定義を次のとおりとしています。
①植物の一部であること
②花が咲いた後にできる果実であること
③食べられる実の中に種があること
この原則から考えるとトマトは果物ということになり、実際に果物という認識を持っている国民も少なくないようです。
しかし実は100年ほど前、アメリカで野菜のみに課税がなされていた時代に「トマトは野菜か? 果物か?」という裁判が最高裁で争われました。判決文では「トマトは植物学的には果物だが野菜畑で栽培されていて、食卓に並んだ時には野菜のようにスープに入ってはいるが、デザートには入っていない」とした上で、トマトを法的には野菜であると結論付けています。
さらに2011年、アメリカ議会において学校給食に関する連邦政府支出法案が可決されましたが、法案内で冷凍ピザは「トマトペーストを含んでいる」という理由から野菜料理として位置づけられているのです。
野菜と果物の区別は昨今でも様々な面から議論が交わされますが、分類の大きな指標となっているのは「食べるときに、どちらに思えるか?」という人々の感覚であることがわかります。
もしかすると私たちも今後食事をしていく中で、野菜の新たな果物のような魅力を見つけられたり、果物だと思っていたものの野菜としての可能性を発見して、分類論争に一石を投じてしまう日が来るかもしれません。
坂野絵美(フリーライター)
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