更新日:2021.07.14食トレンド グルメラボ
しなやかなアイデンティティとチーム力を誇りに “100年後の京料理”をめざすシェフ|シェフのヨコガオ #78【cenci】坂本 健氏
美しい景観で知られる京都・岡崎エリア。平安神宮のそば、閑静な街並みに調和する和の佇まいが【cenci(チェンチ)】だ。イタリアンの枠にとらわれることなく、生まれ育った町・京都らしさを大切に。「いま京都に行くなら、まずここの料理。そんなふうに選んでもらえる店でありたい」。その熱き思いを胸に料理に向かう姿勢は、国内のみならず海外からも高く評価され、2021年の「アジア・ベストレストラン50」では91位にランクイン。京都らしさ、チームを軸に未来を見すえる、坂本シェフのヨコガオにじっくりと迫る。
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時代が移り変わっても選ばれる店。真摯な願いを店名に
タケノコと、鮎。 京都らしさが軸の2つの料理
チームで思いをひとつに。 めざすは100年後の京料理
今回インタビューしたシェフ
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坂本 健 氏
1975年、京都生まれ。大学在学中に欧州旅行の際にイタリア料理の美味しさに出会い、料理人の道へ。伝説の名店【イル・パッパラルド】で3年半務め、基礎を叩き込まれる。笹島シェフの独立に伴い、2002年に【イル・ギオットーネ】に移籍。2005年から9年間料理長を務めた後、2014年に満を持して独立、【cenci】をオープンする。
時代が移り変わっても選ばれる店。真摯な願いを店名に
店は、平安神宮のそばの閑静なエリアにある。半地下が一体となった空間とシックなトーンは、どことなく大人の秘密基地のようだ
もともとフラットな空間だったのですが、スタッフ総出で地面を掘り起こして半地下フロアをつくりました。天井を高くして開放的にしたかったんです。大量に出た土は滋賀・信楽焼きの窯をお借りして、2500個のレンガへと再生。一つずつ、自分たちの手で成形しました。初めて来られたゲストが、階下を見て「あっ!」と驚かれるようすが厨房からもよくわかります。大きな窓越しに見える中庭も手づくりです。石(レンガ)とアイアンと、木。イタリアのレストランのイメージですね。時を経て鉄が錆びていく感じなども、店の味わいの一つとして楽しんでもらえれば。
シダ類が茂る中庭。ヨーロッパの雰囲気と、京都らしさが絶妙に溶け合う
フィレンツェ地方の方言です。学生時代、ロンドンに短期留学をしていた頃に仲よくなったイタリア人が働いていたのが「cenci」という戦前の服などが並ぶ古着屋でした。週末にはイタリア料理を振る舞ってもらい、そのとき食べた人生初のカルボナーラが絶品で、のちにイタリアに行くきっかけになったほどです。彼に店名の意味をたずねたとき、「新しいものを考え出すことも大事だけれど、30〜40年経っても選ばれ、着続けたいと思える服って素敵じゃない?」と言われたのに感銘を受けて。まだどんな職に就くか考えていなかった、20歳頃です。
もともと、前衛的なものだけを追い求める料理にはしたくないと思って……
ヒトサラ編集部
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