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更新日:2021.06.04食トレンド グルメラボ

〈編集後記〉取材中、畑で食べた花ズッキーニに感じた野菜の“若い味”

料理、レストランに対するシェフの思いを記事と動画でお届けする、「シェフのヨコガオ」の最新回を6月3日に公開しました。取材したのは、和歌山県の郊外にありながら2021年度「アジアベストレストラン50」で第64位に選出された【ヴィラ アイーダ】の小林寛司シェフ。春の気持ちいい風が吹く4月末、編集部・郡司が取材で和歌山県・岩出市に訪れてきました。この記事を編集後記としてお届けします。

〈編集後記〉取材中、畑で食べた花ズッキーニに感じた野菜の“若い味”

もぎたての花ズッキーニに
感じた“若い味わい”

    【ヴィラ アイーダ】をドローンで空撮。今回の取材で初の試み

    【ヴィラ アイーダ】をドローンで空撮。今回の取材で初の試み

【ヴィラ アイーダ】が建つ場所は、もともとは小林シェフの実家がもつ田んぼがあった場所。周りには、シェフとマダムが二人育てた耕した畑がいくつもあります。

シェフは「ちゃんと数えてはないけど」と照れくさそうに言いますが、年間約300種類の野菜やハーブがこの畑でつくられているそう。「シェフのヨコガオ」の記事には載せていませんが、小林シェフが使う以外にも、東京や大阪などの名だたるレストランに、【ヴィラアイーダ】産の野菜を送ることも多いんだとか。

    春の畑の主役は、豆。市場には出回らない早摘みの豆を使った料理をつくってくれた

    春の畑の主役は、豆。市場には出回らない早摘みの豆を使った料理をつくってくれた

店内でのインタビュー取材、料理の撮影を終えて、シェフと一緒に畑に出たときの話。

お店の周囲に点々とある畑をいくつか見させてもらい、その中で出会ったのがズッキーニの花でした。

花、といってもまだつぼみの状態ですが、自分が知るズッキーニの細長いフォルムとは、ずいぶん形が違うのに驚きました。大きなつぼみの下に、ちょこんと勾玉のようなちいさな実がなっていて、まったく見たこともない形をしておいます。

とつぜん、シェフがハサミでそれをもいで、「食べてみて」と手渡してくれました。小さな虫を手で払って、言われたままかじってみます。

もぎたての花ズッキーニの実は、一口目にみずみずしさが。そして、噛んでいるとだんだんとズッキーニ本来の香りと味が広がります。塩なんかなくたって、十分すぎるほどに野菜の味が濃く、力強く感じられます。

そして、なによりも感じたのは野菜の“若さ”でした。

考えてみれば、植物に成長サイクルがある以上、若さもあれば老いもあるはず。スーパーに並ぶ形が均一な野菜ばかり見ていて、まったく気にしたこともありませんでした。

若い食材にはみずみずしさと力強さが、熟れた食材にはやわらかさと甘みが。

その状態の一瞬をとらえて、小林シェフは料理にします。

シェフの料理を食べにきたゲストは、「浄化された」という感想を残すことが多いそうです。都会で感じるよりもずっと濃度の高い季節感を、きっと体内で感じて、人間本来の感覚を取り戻すような心地がするのでしょう。

    店内。昼は明かりをつけず、自然光が気持ちいい

    店内。昼は明かりをつけず、自然光が気持ちいい

本場で修行もした小林シェフの出自は、イタリア料理。

だけどふと、今出しているのがイタリア料理なのかどうか気になって、畑で「シェフがつくっているのはイタリア料理なんですか?」と聞いてみました。

「いや、イタリア料理ではないですよ」

笑いながらそう答えたシェフに、それ以上の質問するのはなんだか野暮なような気がして、深く聞くのはやめました。

「シェフのヨコガオ」はこちら (動画)YouTubeのご視聴はこちらから

この記事を作った人

ヒトサラ編集部・郡司

旅行ガイドブックの編集者だったが、外食・居酒屋好きが昂じてヒトサラへ。居酒屋文化とシューマイ、痺れる麻婆豆腐が大好き。

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