ヒトサラマガジンとは RSS

更新日:2024.07.12食トレンド

富山でしかつくれないウイスキーを、世界へ。未来に継承すべき北陸最古のウイスキー蒸留所「三郎丸蒸留所」の魅力と想い

北陸最古のウイスキー蒸留所として、伝統を継承しながらさまざまなイノベーションに挑戦し続けている三郎丸蒸留所。2024年6月末には三郎丸シングルモルトウイスキーシリーズの最新作となる、2020年蒸留のシングルモルトウイスキー『三郎丸Ⅳ』が発売開始されました。地域に根差し、歩み続けることで生まれる三郎丸ウイスキーの魅力と、世界そして未来を見据える同蒸留所社長・マスターブレンダー&マネージャーの稲垣貴彦さんの想いに迫ります。

三郎丸

最古から今、そして未来へ

    蒸留所外観

    1952年製造開始の、北陸最古のウイスキー蒸留所

1862年に母体となる若鶴酒造が創業し、1952年よりウイスキーの製造を開始した三郎丸蒸留所。戦後の米不足で日本酒づくりが難しい状況下でウイスキーづくりを始め、初のウイスキー商品となる『サンシャインウイスキー』を発売し始めます。しかし1953年の火災により約635坪が全焼。その後、半年もかからず工場の再建に成功した背景には、「地域の人々の誠意と努力」があったと言います。

それから時を経て、2016年。「北陸唯一の蒸留所を、そしてこれまで続いてきたウイスキー造りを途絶えさせるわけにはいかない。」との想いから老朽化した蒸留所の改修プロジェクトがスタート。クラウドファンディングとしては当時、日本で5番目の金額を達成するなど多くの人々の支援が集まり2017年に生まれ変わったという経緯を知ることでも、その人気や注目度の高さの様子が伺えます。

    2024年6月末に行われた東京発表会でこれまでの経緯や展望を語る、若鶴酒造株式会社代表取締役社長・三郎丸蒸留所 マスターブレンダー&マネージャー、稲垣貴彦さん

    2024年6月末に行われた東京発表会でこれまでの経緯や展望を語る、若鶴酒造株式会社代表取締役社長・三郎丸蒸留所 マスターブレンダー&マネージャー、稲垣貴彦さん

そして現在。北陸で最古の見学のできるウイスキー蒸留所として、全国から人々が訪れる場所となっています。また敷地内には、富山の旬菜を楽しむことができる酒蔵レストラン【竈flamme炭三郎】も併設。ウイスキーの魅力を、様々な方法で「五感で楽しめるようにした」と稲垣さんは話します。

駅から徒歩60秒、という立地の良さもプラスに働き、今では海外からの旅行客も含め、年3万人弱が訪れる場所となっているそう。見学・体験ができるスペースのリニューアルも行っているそうで、今後は更に地域の活性化に繋げ、富山の観光産業推進の一助となる計画を見据えているとのことです。ウイスキーをつくることだけにとどまらない、その視野の広さが三郎丸というブランドの価値や魅力を益々底上げしているのではないでしょうか。

最新作、シングルモルトウイスキー『三郎丸Ⅳ』

    三郎丸Ⅳ

    2024年6月に発売されたばかりの新作『三郎丸Ⅳ』

コンセプトに「The Ultimate Peat(ピートを極める)」を掲げているという、三郎丸のウイスキーづくり。稲垣さんが曽祖父から続くウイスキーの味に感銘を受けたというそのピートの味わいとは、“スモーキーさ”、と言うとわかりやすいでしょうか。

    ピート

    『三郎丸Ⅳ』に使用されている、ハイランドピート(左)とアイラピート(右)

『三郎丸Ⅳ THE EMPEROR(皇帝)』※には、スコットランド・内陸ハイランド地方のピート(以下、ハイランドピート)のみでの仕込みが行われています。ハイランドピートはアイラピートに比べ、スモーキーさがストレートで力強く、乾燥した木を燃やしたような乾いたニュアンス。木桶の導入により独自の乳酸菌による多様な発酵がおこなわれるようになり、フルーティーさとモルティさが両立しています。

※昨年発売された同三郎丸シリーズ『三郎丸Ⅲ THE EMPRESS』には、アイラ島のピート(アイラピート)を使用しています。

富山でしかつくれないウイスキーを

    ZEMON(ゼモン)

    世界初の鋳造製のポットスチル「ZEMON(ゼモン)」

「地域に拠って、世界に立つ」をミッションとし、富山の魅力を世界に発信していきたいと展望を掲げる三郎丸蒸留所。ウイスキーづくりの様々な場面で、富山ならでは、を取り入れています。

その中の1つが、世界初の鋳造製のポットスチル「ZEMON(ゼモン)」の使用です。これは、富山県で400年の歴史を持つ高岡銅器の梵鐘の製造技術を活かして開発した蒸留機となっています。熱伝導率に優れ環境にも配慮されており、これまでイノベーションなどに関わる数々の賞を授賞。国内でも特許を取得し他の蒸留所での導入もされています。2022年9月にはウイスキーの本場英国でも特許を取得しました。

    三郎丸ウイスキー

    富山の地に根差し、国内外へと発信を続ける三郎丸蒸留所

またウイスキーには富山の水を使うことはもちん、地元のミズナラを使った樽を使用するなど、富山の自然や文化、ものづくりの技術を未来や世界へ広げていくことも使命としているといいます。

なお能登半島地震では大きな被害がなかったことから、1樽をチャリティーボトルとして発売。また、台湾にも三郎丸のファンが多いことから、台湾東部地震の際には復興支援策として台湾チャリティーボトルを発売するなどの活動を行いました。

    チャリティボトル

    チャリティ用の特別デザインボトル

未来に残すべき伝統を継承しながら、満足して頂けるウイスキーづくりをしていきたいと話す稲垣さん。ジャパニーズウイスキーとして世界の舞台で勝負できる新たな価値づくりのため、毎年様々なイノベーションに挑戦し続けられています。将来や世界を見据えながら、今後も富山に拠点を置き“富山でしかつくれないウイスキー”を極めていかれることでしょう。

この記事を作った人

鈴アヤ(ヒトサラ編集部)

この記事に関連するエリア・タグ

編集部ピックアップ

週間ランキング(9/27~10/3)

エリアから探す