“サステナブル”に注目。イタリア「アブルッツォワイン」の魅力とは
SDGsやフードロスへの取り組みが重要視されるようになり、最近では食事に寄り添うワインにも「サステナブルワイン」として注目を集めるものがあることをご存知ですか? 今回、伝統的に自然との共生という意識が高い、イタリア中部・アブルッツォ州のワインの魅力を紹介するイベントが、東京・大手町「アマン東京」のイタリアン【アルヴァ】で行われました。サステナブルワインやアブルッツォの特徴、サステナブルワインを生み出すワイナリーから郷土料理とのペアリングまで、まるっとご紹介します。
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“サステナブル”の潮流はワイン界にも!
環境への配慮は当たり前の土地柄「アブルッツォ」
アブルッツォの郷土料理とのコラボレーション
“サステナブル”の潮流はワイン界にも!
自然との共生、SDGsの重要性が言われるなか、食の世界にも「ノーズ・トゥー・テール」と呼ばれるような、食材全体を使い切ったり、不揃い食材を積極的に活用するなど、新しい潮流が生まれています。
最近では、皿の上のみならず、食事に寄り添う飲み物にもその影響が。それが、最近耳にするようになった「サステナブルワイン」です。
特に、環境への意識が高く、スローフードの発祥の地ともなったイタリアでは、サステナブル認証、SQNPIを取得したワイナリーも徐々に増えてきており、認証を受けたワインにはミツバチのマークのステッカーが表示できるそう。
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ミツバチが目印のSQPNI認証ステッカー。SQNPIとはSistema di Qualità Nazionale di Produzione Integrata、統合生産国家品質システムのこと。
環境に優しいワインという意味では、オーガニックのぶどうと自然の酵母で作られたナチュラルワインも挙げられますが、サステナブルワインの場合は、ボトルの中身だけでなく、従業員の雇用環境や排水の処理、地域社会との共生まで、より幅広いサステナブルを追求している点が特徴です。
【アルヴァ】では、ペアリングが記載されたメニューや、アブルッツォワインの魅力を紹介するメニューも配られました
そんなイタリアの中でも、伝統的に自然との共生という意識が高い、イタリア中部・アブルッツォのワインの魅力を紹介するイベントが東京・大手町のラグジュアリーホテル「アマン東京」のイタリア料理店、【アルヴァ】で行われました。
イベントを主宰したのは、イタリア在住歴24年の日本人ジャーナリスト、池田匡克さん、愛美さん夫妻、そして、イタリアワインの第一人者として知られる、ワインジャーナリストの林茂さん。
環境への配慮は当たり前の土地柄「アブルッツォ」
3000メートル級の山々がそびえるアブルッツォ州
さて、何よりもアブルッツォってどこ?という声も聞こえてきそうですが、首都ローマが長靴の膝下あたりだとすると、ちょうどその裏側のふくらはぎのような場所。高い山あり、海ありと標高差の大きい土地柄は、海山の幸に恵まれた土地柄、日本とも少し似ています。
匡克さんによると、アブルッツォ州には古代遺跡のような、特に目立つ観光スポットはあまりない反面、豊かな自然を生かしてグリーンツーリズム、エコツーリズムを推し進めているそう。「アブルッツォ は全面積の30%が国立公園などの自然保護区で、これはヨーロッパ最大です。国立公園内にブドウ畑があるワイナリーもありますから、自然環境保護というのはどのワイナリーにとっても必須であり、ごく当たり前なことなのです。
豊かな自然に囲まれた「Fattoria Savini」社のぶどう畑
さらに匡克さんは、1984年に、ドイツ人の現代美術家、ヨーゼフ・ボイスがこの地に滞在し、自然保護プロジェクト「ディフェーザ・デッラ・ナトゥーラ (Difesa della Natura)」を立ち上げたことも影響していると考えています。7000種類もの樹木を植えるなどして、アブルッツォが持つ生物多様性を訴えたこともあり、この地域にオーガニックやビオディナミのワインが多い理由には、そんな背景もあるのでは、と指摘します。
「実際に、アブルッツォ州の全DOC(※)生産地域の70%以上が有機農法の畑です。自然派、とくに名乗っていませんが有機農法、野生酵母と自然発酵でワイン生産をしているワイナリーも多くあります。」
※DOC……Denominazione di Origine Controllataの略。イタリアワインの格付けのひとつで、上から2番目に位置する。
「Valforte」社のワインカーヴ
また、その歴史はというと、林さんによれば「サステナブルワイン」とは、2000年ごろにイギリスのネゴシアンがいわゆる『オレンジワイン』を売りだし始めたのがきっかけです。正確なカテゴリーとしての位置付けはないのですが、イタリアでも特に北部で使われるようになりました。今日、オーガニックの認証がなくともほとんどすべての生産者が農薬を減らし、化学物質を使わない農業にシフトしています」とのこと。
今回、テイスティングするワインも「サステナブルワイン」と自称しているわけではありませんが、「ミツバチマーク」=SQPNI認証も取得したFattoria Savini社など、5社のワインが揃いました。
環境に配慮した5つのワイナリー
それでは、その5社をご紹介していきましょう。
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「Ciavolich」アンフォラを使った自然発酵、自然派ワイン
「Tenute Barone di Valforte」ソーラーパネルなども導入し環境やエネルギーに配慮したサステイナビリティを重視している
「Fattoria Savini」生物多様性を重視し、経営方針にもサステナブルを織り込み、ミツバチマークのSQPNIも取得
「Cantine Torri」60年以上有機農法を使用したぶどう栽培を行っている
「Collefrisio」建築も含め環境に配慮したワイン作りを創業当初から重視している
アブルッツォの郷土料理とのコラボレーション
そんな場所ですから、郷土料理も海の幸・山の幸を満載にしたものばかり。【アルヴァ】の平木正和シェフは、イタリア在住17年、ヴェネツィアの5ツ星ホテルの料理長も務めた経験の持ち主。「アブルッツォの魅力は、ローマのあるラッツイオ州の隣で、ラムやペコリーノチーズのような山の幸に恵まれており、アドリア海からのシーフードも豊富。当時からアブルッツォのモンテプルチアーノやトレビアーノなどをよく飲んでいましたが、おいしく、味と価格とのバランスが良いのも魅力です」と話します。
海を望む「Cantine Torri」社のモンテプルチアーノ種のぶどう畑
そう、イタリアワイン好きなら、アブルッツォと聞いて思い浮かべるのが「モンテプルチアーノ ダブルッツォ」。直訳するとアブルッツォ のモンテプルチアーノ(黒ぶどう品種)、この地域を代表するワインです。「温暖なアブルッツォは、このモンテプルチアーノ種にあっていて、アブルッツォワインの8割がこの品種で作られているのです」(林さん)というほどの、この地域を代表するワイン。それぞれのワインと、それに合わせた料理を作った平木シェフのペアリングの意図をご紹介していきましょう。
食事のスタートは、まずは白のトレッビアーノ種、「Ciavolich 2019 Fosso Cancelli Trebbiano d’Abruzzo D.O.P.」から。蜂蜜を思わせる色合いは、樽だけではなく、アンフォラで熟成しているからで、土地のミネラルを十分に吸収する樹齢60〜65年の古木を使っているそう。
『鰊(ニシン)と山菜のヴァリアツィオーニ』。豊かな果実味と柑橘の香りが酢漬けにしたニシンにフルーティなレイヤーを加えます
「結構しっかりした白なので、日本の旬の青魚、鰊を色々なヴァリエーションに仕立て、力強い山菜と合わせようと思いました」
続いては、アブルッツォを代表するモンテプルチアーノ種を使ったロゼ、「Barone Di Valforte 2021 Valforte Rose Cerasuolo d’Abruzzo D.O.P.」。「チュラスオーロ」と呼ばれるこちらは、桜色、あるいは夕焼けの色を映したような綺麗なロゼ色で、フレッシュないちごキャンディのような香りと、すっきりとした酸のあるワイン。
『ホウボウと桜海老のプロデット サフラン』。サフランの蜂蜜のような甘い香りが、ロゼのいちごのようなフルーツ感を引き立てています
「ロゼはすごくフレッシュでフルーティでしたので、魚介と桜海老の甘さ掛け合わせました。アブルッツォはサフランの生産地なので、サフランの風味を足しました」
3種類の赤は、軽やかで若いものから順番に。ベリーのような程よい果実味の、「Fattoria Giuseppe Savini 2019 Rondineto Montepulciano d‘Abruzzo D.O.P.」。
『アスパラガスと相模原産有精卵 ペコリーノロマーノ』。ワインのボディとのバランス、ほのかなスモーキーさもあっています
「若い赤でしたので卵とペコリーノの組み合わせ、古典アブルッツ料理のカチョエウォーヴァからイメージしました」
続いては、収量を減らすことで果実の凝縮度を増して造ったビオワイン、「Tenuta Torri Cantine 2018 Bakan Montepulciano d‘Abruzzo D.O.P.」。
『北海道産オーガニック全粒粉のスパゲッティ アッラ・キタッラ 蝦夷鹿のラグーとアイヌネギ』。すみれや赤い果実、スパイスのニュアンスが、黒胡椒を効かせたラグーとマッチしています
「赤身の肉との相性の良いモンテプルチアーノ種、鹿のラグーとアイヌネギのアクセントで、王道のマリアージュ」
フレンチオークの小樽で24ヶ月熟成させたという「Collefrisio 2014 Semis Montepulciano d‘Abruzzo D.O.P.」。
『ニュージーランド産スプリングラムのアッロースト アブルッツォ産黒オリーブ オレガノとトマト 新じゃがいものローザ 青森県産大蒜とバルサミコ』。しっかりとした樽に負けないぶどうの凝縮感は、香りのある肉の味わいをうまく引き立ててくれています
「しっかりしたボディの赤でしたので、遊牧が行われているアブルッツでもよく食されている、風味の良いラム肉にアブルッツ産の黒オリーブとジャガイモのバラなどを加え、古典でありつつ、モダンなプレゼンテーションで、目で楽しんでいただけるように工夫しました」
最後は、アーモンドのケーキにチョコレートをかけた、アブルッツォの郷土のデザート『バロンツォ アーモンドとチョコレートのトルタ オレンジのカラメラート ジェラートヴァニラ』で締めくくり
左から、林さん、平木シェフ、池田さん
全般に豊潤な果実味豊かで、ほっとする優しさに満ち溢れたワイン。さらに、今回ご紹介したのは1本1,700円〜というお手頃価格で手に入る優秀銘柄ばかり。せっかく飲むのなら、少しでも環境に優しいものを。おいしく気軽に取り入れられるサステナブル志向のワインは、今の気分にもマッチした選択となりそうです。
取材・文/仲山今日子 撮影・写真提供/仲山今日子、アルヴァ
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