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更新日:2017.06.09旅グルメ

後退ではなく、後ろに進むタイ料理。その真意とは!?【Nahm】

アジアのトップレストランのひとつでありながら、自身の料理を「後ろに進んでいる」という独特の言い回しで表現する【Nahm】のシェフ、プリン・ポルスク氏。話を聞くほどに、料理を味わうほどに、少しずつ見えてきた、その言葉の真意とは…。

後退ではなく、後ろに進むタイ料理。その真意とは!?【Nahm】

家族でテーブルを囲む。日常の食卓に潜む幸せな食のあり方を追求

 「後退しているというと語弊がありますが、私の料理は後ろに進んでいます」
 それが、かつて「アジアのベストレストラン50」において頂点に登り詰めたことがある【Nahm】のシェフ、プリン・ポルスク氏の言葉だとはにわかに信じがたいかもしれません。しかし、その言葉も、プリン氏の話を聞いていくと、決して間違いでないことが分かります。それどころか、料理を味わうと、スッと腑に落ちていくのです。たとえば、料理はレストランながらシェアして味わうことが基本スタイル。プリン氏は「タイ料理は食卓を囲み大皿の料理をみんなで分け合って食べます」と話せば、「私の家も農家の大家族で、皆で料理を分け合うことが幸せでした。それが今ではワンプレートで完結する料理が多くなって…」と現状を嘆きます。だからこそ、古き良き時代の、タイの食卓の情景を大切に。ここではカレーも炒め物も、サラダも2名以上ならシェアをするのです。

    「ロイヤル・プロジェクト」のブレスチキンを使ったイエローカレー。100年以上も前のレシピブックをもとにつくった一品

    「ロイヤル・プロジェクト」のブレスチキンを使ったイエローカレー。100年以上も前のレシピブックをもとにつくった一品

100年以上も前のレシピをもとにタイの古典料理を再現

 とはいってもプリン氏がただの懐古主義の料理人といえばそうではありません。タイの古典料理を追求すべく、500冊ほどを所有するという、100年以上も前のレシピブックや古書からタイ料理のあり方を学び、レストランという場でそれを再現。そればかりか、食材は鮮度とオーガニックなものにこだわり、中には「ロイヤル・プロジェクト」(1950年代から始まった、タイ王室が国民の生活向上のために推進する農民支援)の鶏肉や野菜も積極的に使用。奇をてらうことなく、古き良きを知り、それをしっかりと後世に残す。ひたすらに美味しさだけを求めることがレストランの役割ではないことを、【Nahm】の料理は教えてくれます。

  • レストランは「COMO Metropolitan Bangkok」の1階にある

    レストランは「COMO Metropolitan Bangkok」の1階にある

  • 豚肉と海老、ニンニクのフライなどをハイゴショウの葉で包んだ一品

    豚肉と海老、ニンニクのフライなどをハイゴショウの葉で包んだ一品

プリン・ポルスク氏

ブーランジェリエから料理人への転身。古き良き時代のタイ料理を今に伝える

 タイ出身。料理人を志す前にベーカリーとパティスリーで働いており、新たな経験を積むために海外へ渡り、料理の勉強をすると、幼い頃の記憶が蘇り、自ら進むべき道は料理人だと悟る。その後、タイ料理レストランとして始めてミシュランの星を獲得したロンドン【Nahm】で修業を重ね、エグゼクティブシェフであるデイヴィッド・トンプソン氏がバンコクに【Nahm】をオープンした際にヘッドシェフに就任。2017年「アジアのベストレストラン50」では5位を獲得した。

【Nahm】

☎+66 2 625 3388
住所:COMO Metropolitan Bangkok, 27 South Sathorn Road, Tungmahamek Sathorn, Bangkok
営業:12:00~14:00(月曜~金曜のみ)、19:00~L.O.22:30
休日:無休

この記事を作った人

撮影/鈴木拓也 取材・文/吉田慎治

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