香り広がるフランス料理とスパイスカレーで迎えてくれる、カウンターフレンチ|赤羽【odorat】
フランス語で「嗅覚」を意味する【odorat】。その店名の通り、香りをテーマにしたフランス料理店が2023年7月27日にオープンしました。オーナーシェフの永瀬友晴さんは、フレンチの名店の数々で腕を磨いた後、スパイス料理で名高い【スパイスカフェ】での研修を経て独立。その経験を生かして、ランチではスパイスカレー、ディナーではフレンチのコースを提供するという新境地で迎えてくれます。
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スパイス使いが光る! 鼻腔をくすぐるフレンチのディナーコース
香りをもっと気軽に楽しめる、ランチ限定のスパイスカレー!
生まれ育った街に構えた、アットホームなカウンターフレンチ
スパイス使いが光る! 鼻腔をくすぐるフレンチのディナーコース
赤羽と言えば、大衆居酒屋が軒を連ねる呑兵衛の聖地というイメージですが、賑わう駅前を抜ければ落ち着いたエリアが続きます。赤羽駅から徒歩8分ほど、そんな静かな一角にひょっこり現れるのが【odorat】。店名に掲げたフランス語は「嗅覚」を意味しています。
そんな【odorat】を体感できるのが、さまざまな素材や技法を駆使して香りを立たせた料理。あるものは皿が運ばれるやふわりと広がり、あるものは口に入れると弾けるようなアクセントに……。
惜しまれつつ幕を閉じた名店【パリの朝市】でフランス料理人としてのキャリアをスタートし、自店を構えるにあたり押上の【スパイスカフェ】の門を叩いたという永瀬さん。その経歴を存分に生かして、オーセンティックなフレンチをベースに、スパイスやハーブなどの香りが効いた新しい味わいをつくり出しています。
『白子 ごぼう』。日本の季節を味わえる旬素材をふんだんに取り入れるのも魅力の一つ
タラの白子のムニエルは、焦がしバターの芳醇さがトロリと濃厚な白子をぐっと引き立てます。さらに、ごぼうをなめらかなソースと素揚げにして添えて、セリの葉と根をあしらい、香りや食感をプラス。少々ちりばめた角切りのフレッシュトマトとケッパーも心地よいアクセントになっています。
一口ごとに重層的な味わいが感じられて、食べ進めるのが楽しい一皿です。野菜は「THE HASUNE FARM」の無農薬・有機栽培のものを使い、板橋区という近隣ゆえの鮮度の良さも魅力に。
『オオモンハタのパイ包み』。正統派フレンチの一品は軽やかさを感じる味わいに
仕上げにもベルガモットを削りかけて、フレッシュな香りが際立つ
焼き上がりとともに漂う香りがたまらないパイ包み焼きは、クラシックなフランス料理の真骨頂。オオモンハタを帆立のムースとちぢみほうれん草、パイ生地で包んで芳ばしく焼いています。好相性のオランデースソースに、小田原産ベルガモットの果汁と皮を忍ばせたのは永瀬さんならでは。サクッと口当たりのよいパイの中から、オオモンハタのふっくらと上品な旨みが広がり、ベルガモットの香りが爽やかな余韻を残します。
オオモンハタは、「魚種が豊富で、質がいい」と永瀬さんが絶大な信頼を置き、多くの魚介を仕入れている高知県「与力水産」から届いたもの。
蝦夷鹿や天然きのこといった野山の恵みを堪能できるメインディッシュ
蝦夷鹿には赤ワインとフォン・ド・ヴォーで仕立てたソースを添えた、王道のスタイル。と思いきや、ソースにはネパール山椒とも呼ばれる「ティムールペッパー」を加えるのが【odorat】流。噛み締めると、パワフルな旨みがあふれ出る蝦夷鹿。それをどっしりと受け止めるソースに、ティムールペッパーの風味が華やかなインパクトを与えています。
添えられたきのこは、長野県大鹿村から届いた天然もの。永瀬さんと修業時代をともにして、現在は「旅舎右馬允」を営む知人が山に入って採取したもので、その香り高さは抜群です。
ご紹介した料理はすべてディナーコースより。食材や構成が異なる6,500円と9,000円の2つのコースがあります。
スパイス使いが光る! 鼻腔をくすぐるフレンチのディナーコース
香り立つ料理をより楽しむために、永瀬さんが考えたのはランチメニューとワインのラインナップ。ランチタイムには噂を聞きつけたカレーマニアも足を運ぶというスパイスカレーが登場。料理を引き立てるワインはナチュールで揃えたのもこだわりの一つです。
ランチタイム限定16食のスパイスカレー。1種盛りは1,300円、2種合いがけは1,600円
ランチ限定のカレーは定番『カシューナッツチキンカレー』と月替わりの2種類があり、この日はキリッとした辛さの『海老とトマトのカレー』がお目見え。
ディナーのフレンチには【スパイスカフェ】仕込みのスパイス使いを駆使しているのと逆に、ランチのカレーにはフランス料理のエッセンスを効かせているそうです。
例えば、『カシューナッツチキンカレー』はココナッツミルクの代わりにカシューナッツをピューレにしてコク深く、『海老とトマトのカレー』は海老の殻をブランデーでソテーして旨みを際立たせるといった具合。
「新しいカレーをどんどん試したくなってしまう」と言うほど、永瀬さんの頭の中は新しいレシピのアイデアがいっぱい! どんなカレーが味わえるか、訪れたときのお楽しみに。
白と赤を各3種類、スパークリングワインをグラス(800円~)で用意している
ワインは産地を限定せず、フランスはもちろん、南アフリカやニュージーランド、日本のものまで幅広く取り揃えています。ナチュールを中心にしたのは、天然のきのこや山菜、無農薬野菜、ジビエといった自然そのものの味わいを持つ素材をふんだんに使っている料理だから。
ナチュール特有のクセが強いものよりも飲みやすさを考慮してセレクトし、グラス主体で用意しているので料理に合わせて気軽に楽しむことができます。
生まれ育った街に構えた、アットホームなカウンターフレンチ
L字カウンターに対面したオープンキッチン。料理もサービスも永瀬さんが1人でこなすワンオペレーション
住宅も多い街並みに溶け込むように建つ【odorat】。店名を刻んだプレートをさり気なく掛けた瀟洒なエントランスが目印です。ドアを開けると、全8席のカウンターがキッチンを囲む、すっきりシンプルな空間になっています。
独立して店を構えるならばこの地に決めていた、という赤羽は永瀬さんが生まれ育った場所。出歩けば、子ども時代を知るご近所さんから声が掛かることがあるほどの地元なのです。
本格的なフレンチに馴染みが薄い赤羽だからこそ、いきなりディナーのフルコースはハードルが高いだろうと、ランチタイムに設けたスパイスカレーは永瀬さんの発案。
昼は近隣に務める人のリピーターが、夜は「こんなお店が欲しかった!」とゆったり食事を楽しむ地元住まいの方が増えているそうです。
生まれも育ちも赤羽っ子。「身近に楽しめるフレンチレストランを」と地元で開業へ
聞けば永瀬さんのお父さんは元フランス料理人。原宿でフレンチレストラン【ナガセ】を営んだ後、【odorat】のほど近くにある洋風居酒屋【おもてなし厨房 七ガ瀬】を切り盛りしているそうです。厨房に立つ父の姿を見て、幼少の頃から料理に親しんだ永瀬さん。その若きシェフが築いた新店に、【おもてなし厨房 七ガ瀬】で話を聞きつけた常連さんがやってくることもあるとか。
フレンチなのにほっと寛げてしまう、そんなコージーな雰囲気はあふれるような地元愛があるからなんだ……と納得!
もちろん地元の方だけでなく、誰でもウェルカムな温かさは下町らしさが残る赤羽ならでは。ちょっと足を延ばしてでも訪れたい、そんな一軒が誕生しました。
撮影/今井裕治 取材・文/首藤奈穂
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