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更新日:2017.05.27食トレンド 旅グルメ

「アジア 50 ベストレストラン」TOP10入りの実力は? デリー【インディアン・アクセント】訪問記

今や世界の食通がもっとも信頼するレストランガイドとなった『world's 50 Best Restaurants』。そのアジア版でTOP9にノミネートされる、インド・デリーの【インディアン・アクセント】に潜入してきました。

「アジア 50 ベストレストラン」TOP10入りの実力は? デリー【インディアン・アクセント】訪問記

asia's 50 Best RestaurantsでTOP9にノミネートされる【indian accent】

 今や「ミシュラン」をしのぐ勢いで、世界のフーディーズ(食通)たちの店選びの指標となっている「world's 50 Best Restaurants」。各エリアのランキングも発表されていて、最新のアジア版ではバンコクの【GAGGAN】がNo.1。日本勢では、2位に【NARISAWA】、5位に【龍吟】がトップ10入り。そのランキングで9位にノミネートされる【indian accent】に、所用でインド・デリーに寄った機会に訪ねてみました。

欧米スタイルに則った雰囲気を持つハイソなレストラン

 ベーシックな英語ができれば、予約はメールで可能です。私の場合は、土曜日のディナーだったにも関わらず、約10日前の連絡でも席は取れました。
 場所は、いわゆる高級住宅街「77 friends colony」。このエリアにあるブティックホテル『THE MANOR』の中に店はあります。
 店に着くと、まずバーエリアにエスコートされ、そこで食前酒をオーダー。10分ほど時間を潰し、用意ができると席に案内されます。このあたりは、欧米スタイルの「レストラン」仕様。来ている客層としては、現地の富裕層らしきインド人と欧米系の顔が半々くらいでしょうか。満席です。

挑戦的なアミューズから前菜の流れ

 したり顔で実況していますが、実はアジアNo.9という情報以外、どんな料理を食べられるかもわからず、勢いで予約してしまった私です。
 まずはアミューズが出てきてびっくり。濃厚な『ポルチーニのポタージュ』。そこに添えられたインドのパンの一種は『クルチャ』は、ハーブがふんだんに使われた未知の味。立て続けに給される前菜も、コーンに入れられた『鶏肉のトマト・カレー』や保存瓶に詰められた『海老のグリルとチーズ』など、そのプレゼンテーションは、明らかに【エルブジ】以降のそれです。

インド料理に基づきながら、イノベーティブな皿に昇華させたメイン

 メインの『仔羊のタンドリ』、ラストの『チキン・キーマ』など、本来はオーソドックスなインド料理も、この店のフィルターを通せば、イノベーティブな料理へと変貌を遂げています。それらを味わいながら、こんな店がインドにもあったんだ?と率直に思ったのですが、現在のグローバルな感覚のなかでは、あって当然だと思い直しました。

 むしろ、アジア50ベストレストランでは、そういったチャレンジングな要素を持っているレストランの評価が高い傾向はあるのでしょう。そして、日本より有利だと感じたのは、階級社会があるインドで、そのハイソサエティなクラスは、より欧米文化とマナーが近いことでしょうか。

【インディアン・アセント】総評

『CHEF TASTING MENU』と6グラスのペアリングワインのコース、食前酒とミネラルウォーター、税・サービス料すべて込みで、日本円にして約1万5千円也。【セララバアド】や【クラフタル】、【チッタ アルタ】などで食事を楽しんだ感覚です。ただ、インドとの物価の違いを考えると、約5万円のディナーを食べたことになるでしょうか。となると、【龍吟】、【NARISAWA】、【HAJIME】クラス。
 そのくらいのランクのコースだったのですが、美味しかったか?と訊かれたら、「はい」とは即答できません。でも、楽しかったか?と訊かれれば、純粋に「はい」です。

 そう、この摩訶不思議な料理を食べながら、こんなことを思ったのです。「美味しさ」とは、その人の経験に基づいているので、本来保守的なもの。その一方で、脳で堪能する料理があるんじゃないか?と。
 例えば、映画を見るように、小説を読むように、音楽を楽しむように。その表層にあらわれたものだけではなく、行間にあるものに想いを馳せてこそ、楽しみが増す。そんな料理の表現が確立されつつあるのではないかということを改めて実感したのです。
 コースを通して表現されたストーリー、インド料理と最先端のテクニックの融合。それらを含めて、【インディアン・アクセント】にも「ここでしか味わえない」と思わせる何かがあります。例えば、フランス料理を基にしたイノベーティブなら、日本でも高いレベルで楽しめますが、インド料理のイノベーティブはさすがに日本では聞いたことがありません。
 それは、インド人シェフがインド料理を進化させているという、自国の食文化へのアイデンティティの深さと関係しているのでしょう。半分はグローバルなものだったとしても、半分は借り物ではない何か。

 古くはビートルズから作家など多くのクリエイターが、インドに行くと様々なことを感じてしまうようですが、ふと訪れたインドで私自身も刺激を受けてしまったみたいです。本能で楽しむ「美味しさ」と、脳で味わう「美味しさ」、あるいはそのバランスということを頭の片隅に抱きつつ、他のアジアのトップレストランも体験してみたくなりました。

インディアン・アセント

営業時間:ランチ 12:00~14:30 ディナー 19:00~、21:45~の2部制
電話番号: +91 11 4323 5151 / +91 9871117968
email:reservations.del@indianaccent.com

この記事を作った人

撮影・取材・文/杉浦 裕

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