独学で夢を掴んだ【レフェルヴェソンス】生江 史伸シェフ×【辻調理師専門学校】辻 芳樹校長の食談義 | 第3話
国内外から注目を集める一流シェフや料理人、食に精通するスペシャリストをゲストに招き、食のトレンドをお届けするインターネットラジオ番組「ヒトサラ シェフズテーブル」。ダイジェストVol.25~26のゲストは、【レフェルヴェソンス】生江史伸シェフと【辻調理師専門学校】辻芳樹校長の対談をお届けします。
第1話では、辻 芳樹校長と【レフェルヴェソンス】の生江 史伸シェフとの出会いを、第2話では、「いただきますプロジェクト」など料理人の社会参加についてお話を伺いました。注目の最終話では、現代の「食」についてお伺いします。
第3話:地球時代の料理人
世界中に進出していく日本料理店
――ヨーロッパに寿司屋や居酒屋が増えてきましたが、この現状をどうお考えですか?
辻:あと数年ぐらいで10万軒近くの日本料理、和食店が世界中にオープンするでしょう。そんな状況で我々ができることは「本物」とは何かを伝えることですね。
生江:そこですよね、難しいのは。
辻:外国人に日本の真髄を教えなければ日本の料理は発展していきません。彼らが率先して本物を追求する姿勢をもたない限りは、チェーン展開以外の発展は難しいですね。
レネ・レゼピシェフからのひとつの提案
――【noma】のレネ・レゼピシェフと生江さんは親交もあると思いますが、彼をどうご覧になっていますか。
生江:彼は期間限定で東京にレストランを開き、“蟻”を使った料理で話題をさらいましたね。彼は【nomajapan】の開店準備のために日本に滞在し、各地の食文化を調査していたのですが、それで昆虫食を知り蟻を使った料理を出しました。
要するに、それは料理人からのひとつの提案だったんです。昆虫食が伝統に変わっていくかどうかは、時代が決めていくことだと思います。レネが行ったのは「美味」とは違ったベクトルで食糧危機というエキサイティングな問題提起をすることでした。
料理人を目指す人へのメッセージ
――これから料理人を目指す人々へ、何か伝えたいことはありますか?
生江:「焦らず、自分のペースで、あまり結果を求めず、気長にやってほしい。そうしたら必ず見えてくるものがあるから。あなたらしさを職場で表現してくれれば十分。僕があなたを雇った意味はそこにあるから。」と若い人には伝えています。
辻:僕が毎回言っているのは、自分たちで次の時代をつくっていくということは、人に言われてやるものではない。自分が率先してやるもので、次の時代は君たちが開拓していかない限りは、仕事はただ貰ってやるだけのものになる。そんなことを伝えています。そういう人が起こす行動を手助けしていきたいと思っています。
ゲストプロフィール
写真左:L'Effervescence 生江 史伸氏、写真右:学校法人辻料理学館理事長、辻調理師専門学校校長 辻 芳樹氏
1973年、神奈川県出身。1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、【アクアパッツァ】入社。フュージョン系のレストランなどを経て、2003年、【ミシェル・ブラス トーヤ・ジャポン】に入店し研鑽を積む。スーシェフを経験後、2008年にイギリスの三ツ星【ザ・ファット・ダック】入店、スーシェフ及びペストリー部門担当に就任。2009年、帰国。2010年に【レフェルヴェソンス】エグゼクティブ・シェフに就任。「ミシュランガイド東京2015」にて二ツ星を獲得。以来、毎年二ツ星に輝き続けるトップシェフ。近年では「アジアのベストレストラン50 2018」にて第20位に輝き、第1回アジアのサステナブル・レストラン賞を受賞するなど国内外からも注目を集めている。
学校法人辻料理学館 理事長、辻調理師専門学校 校長 辻 芳樹 氏1964年、大阪府出身。1993年に、学校法人辻料理学館 理事長、辻調理師専門学校 校長に就任。2010年、アメリカで開催された国際料理会議では組織委員を務め、「日本料理における多様性~伝統と革新~」について基調講演を行うなど、国内外で活躍中。近著に、光文社刊『すごい! 日本の食の底力 新しい料理人像を訪ねて』など著書も多数。料理界を牽引する第一人者である。
この記事を作った人
ヒトサラ編集部
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