2020年グルメトレンド予測|外食のプロが語る、食の“7つ”のキーワード
2020年のグルメトレンドとは――。ぴあ㈱ 「東京最高のレストラン」編集長の大木淳夫さん、飲食プロデュースを手掛ける「トランジットジェネラルオフィス」代表の中村貞裕さん、フードライターの小寺慶子さんの3名に集まってもらい、いま注目しているお店や料理ジャンル、飲食市場の走りについて語り合っていただきました。記事の最後にはグルメ賢者が2019年にもっともハマり、いろんな人にオススメしたレストランもご紹介します!
外食のプロ3名が注目しているのは、こちらの7つのキーワード。タコスをはじめとする「モダンエスニック」の大ブレイク、「タレ焼肉」や「進化系ラム肉」などのブーム再来。さらに、タピオカで世の中を席巻した台湾料理はスイーツ以外のお店も増えており、台湾料理の幅の広さにも注目が集まっています。
2020年グルメトレンド予測
“7つ”のキーワード
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①「モダンメキシカン」
②「タレ焼肉」
③「新・台湾料理」
④「第2次ラム肉ブーム」
⑤「深化する中華」
⑥「私鉄沿線の店」
⑦「おひとりさまグルメ」
(左)㈱トランジットジェネラルオフィス
代表取締役社長 中村貞裕さん
(中央)フードライター 小寺慶子さん
(右)ぴあ㈱ 「東京最高のレストラン」編集長 大木淳夫さん
キーワード①「モダンメキシカン」
「メキシコ料理」に大ブレイクの兆し
恵比寿にある【キヤス】では、タコスをはじめとした多彩なメキシコ料理をコースで提供
──2019年はメキシコ料理、中でもタコスの波が来ましたね。
うち(トランジットジェネラルオフィス)では、2015年に【グズマン・イー・ゴメズ(GYG)】というファストフードメキシカンを日本に上陸させたんです。当初は海外で人気の「ブリトー」を推していたんですが。
今はタコス人気でブレイクしていませんか?
そうなんです。女性スタッフから「ブリトーは恵方巻きみたいで映えない(笑)」って意見があったので、タコスを全面に押し出したんです。そのタイミングでテレビに取り上げられて大ブレイクしました。
タコスといえば、三軒茶屋の【ロス タコス アスーレス】は衝撃的でした。オープン直後に伺ったのですが、自家製の焼きたてタコスをコースで提供する、というスタイルは今までなかったでしょう? タコスってこんなに美味しいんだって感動しましたね。
そのあたりで、吉祥寺の【タコスショップ】や恵比寿の【キヤス】も出てきて、タコスがバズり始めましたよね。
日本だけでなく、コペンハーゲンでも【ノーマ】のスーシェフが独立して開いた【レストラン・サンチェス】が、ニューヨークでもメキシコ料理店の【コスメ】やタコス専門店【アトラ】が人気。シンガポールにも【スーパーロコ】っていういいメキシカンがあって、世界的にモダンメキシカンの流れが来ていますよね。
キーワード②「タレ焼肉」
焼肉は原点回帰。「タレ焼肉」がキテる!
【誇味山(コミヤマ)】は一頭買いの黒毛和牛をオリジナルのタレで食す焼肉店
──肉のプロ、小寺さんから見て、肉業界ではどんな動きがありますか?
「タレ焼肉」に注目しています。2019年1月にオープンした【誇味山(コミヤマ)】は、タレ焼肉と白飯を追求するお店。サシの入ったサーロインは甘めのタレ、ミスジはコチュジャンで辛めのタレ、薄切りのシャトーブリアンは軽く炙って黄味ダレでと、肉の味わいを倍増させるアプローチが画期的なんです。
──いま焼肉は、“いい肉は塩で”という流れに押され気味ですからね。
タレは肉の味をごまかす、食べ飽きるなど誤解されているけれど、【誇味山】のように部位ごとにタレを変えるなど細やかな工夫で個性を出す店が増えれば、今後焼肉の楽しみも広がっていくと思います。
キーワード③「新・台湾料理」
タピオカだけじゃない、台湾の新たな一面
2019年2月にオープンした五反田の【東京豆漿(トウジャン)生活】では、台湾の朝食文化「鹹豆漿(シェントゥジャン)」が楽しめます
──台湾料理ってまだまだ知られていない。これからディープな台湾料理店が増えてくるのでは?
中華もそういう流れで辺境中華店などが出てきましたもんね。
台湾料理っていっても、南と北じゃ全然違しますしね。
──タピオカだけじゃなく、【フージンツリー】や【フジコミュニケーション】など、台湾料理店のオープンも相次いでますね。
台湾スイーツで言えば、昨年は「豆花(トウファ)」が流行りました。今年は台湾朝食の「鹹豆漿(シェントゥジャン)」も来そうな気配です。「鹹豆漿」はお酢やザーサイをかけて食べる甘くない「豆花」みたいな感じ。中村さん、こちらのお店もぜひ増やしてくださいね!
キーワード④「第2次ラム肉ブーム」
ユニークな店が続々登場! ラム肉ブーム再来
昨年4月にオープンした【ラム焼肉専門店 ラムネ】では、ラム肉食べ比べが人気
──羊肉に注目が集まって来てますね。
ラムは第2次ブームですね。アルゼンチンラムが今年解禁になったこともあり、ジンギスカンブームが再燃するのではないでしょうか。
麻布十番の【羊SUNRISE】や、新宿にある【ラム焼肉専門店 ラムネ】はラム肉の提供の仕方が面白い。特に2019年にオープンした【ラムネ】は、ジンギスカンではなく焼肉、しかも16種以上の部位を選べる日本初の試みで、“羊肉の様々な部位が焼肉で食べられる”という、ラムの新境地を開く店も出現しています。
キーワード⑤「深化する中華」
勢い衰えず、中華がさらに“深化”する
錦糸町に誕生した【サウスラボ南方】。プロデューサーは香港通で知られる、カメラマンの菊地和男さん
──中華ブームは相変わらず勢いが衰えないですね。
2019年は、錦糸町の【サウスラボ 南方(ミナカタ)】や目黒の【サエキ飯店】が話題を集めましたね。あとは、中華一家でご本人も【ジャスミン】ご出身の大城さんが、祖師ヶ谷大蔵で始めた【胡同三㐂(フートンサンキ)】も。
町中華人気で名店が発掘されたり、気鋭の個性派店も続々登場していますね。
年末には、篠原裕幸さん(「RED U-35」グランプリ獲得)が白金台に【ShinoiS(シノワ)】を、田村亮介さん(麻布長江 香福筵の元オーナーシェフ)が外苑前に【慈華 itsuka.(イツカ)】と、二大巨頭が2019年末に中華の新店をオープンしましたね。
白金の【シノワ】は話題ですよね。2020年もまだまだ中華は衰えませんね。
キーワード⑥「私鉄沿線の店」
わざわざ行きたい、私鉄沿線の店が急増
急行が停まらない、京王井の頭線「西永福」駅に位置する【ムーグルモン】にも、グルマンたちが足しげく通っています
最近、私鉄沿線のお店の強さを感じています!
都心から離れているのに客単価は1万円近い価格で成り立つお店が増えていますしね。西永福の【ムーグルモン】は、【カルネヤ】で教え込まれた焼きの技術でサカエヤやエレゾの肉をステーキにするという魅力があり、三軒茶屋の【コジコメ】は、厨房のライブ感とシェフも客も飽きない日替わりメニューを提供。
どちらも確かな技術があり、都心の店となんらそん色ないのであの値段でも納得できる。だから人が集まるんです。
高田馬場から南阿佐ヶ谷に移転した【成蔵】さんだって、5,500円のとんかつを食べに人々が南阿佐ヶ谷までわざわざ足を運ぶんです。私鉄沿線のデメリットはもはやない、という感覚。国領の【ドン・ブラボー】もすごいことになっているし。
東エリアも盛り上がっていますね。浅草も数年前から観音裏に【ペタンク】、【しみいる】、【noura】などができて注目を集めています。「郊外は5,000円以下じゃないと成り立たない」っていう時代ではない。新しい流れはもうきていますよ。
いまや「お店が街に人を呼べる時代」ですね!
これから人を集められそうなエリアだと、僕は湾岸の倉庫街に注目しています。天王洲と浜松町の間。レインボーブリッジも見えて、NYのブルックリンみたいな雰囲気もある。
海外の人に、東京ってこんなに海が近いのになんでウォーターフロントが盛り上がってないの? ってよく言われるんです。湾岸が人気だったバブル期を知っている世代には「あそこいいよね」と響くし、若い世代はこんな場所あったのかと盛り上がると思います!
キーワード⑦「おひとりさまグルメ」
一人客が増え、カウンターの需要が高まる
神楽坂にあるカウンタービストロ【ボルト】。予約のとりにくいカウンタービストロの代表
──おひとりさまの増加で、カウンター需要も評価も高まっていますよね。
ハレの日に外食するのではなく、もはや毎日、という人も増えてきて、今や外食が特別なことではなくなっていますよね。食べたいもの、話題のお店を調べて、一緒に行く人がいなければ一人で、というシチュエーションも多く、カウンター店の人気や需要が高まっています。
だいたい、8人掛けのカウンターの店だと1組は一人で食べに来ていますよね。
カウンターの人気店といえば、2017年にオープンして瞬く間に予約至難店になった神楽坂の【ボルト】や、浅草の観音裏にある【ペタンク】、豊富なグラスワインが楽しめる【カラペティバトゥバ!】の姉妹店、恵比寿の【ALTRO!】など挙げればきりがない。
──開業後じわじわくるのではなく、一気に注目されるようになったのが近年の特徴ですよね。
評価サイトでも一人で行けるお店の評価が上がっている傾向にあります。最近ですと学芸大学で深夜まで営業している“ネオ中華”の【farm studio #20】や、渋谷の自然派ワインと煮込み料理の【Niru】など、一人で行きやすいお店が注目されています。
──カジュアルなカウンター店だけでなく、高級店でも一人需要は増し、FacebookやInstagramなど、SNSで呼びかけ合うオフ会も当たり前に。
コースで2万円を超える店に行きたいけど、同じように食事にお金をかける友達がいない。だから、アンジャッシュの渡部さんの会員制サロンやTERIYAKI美食倶楽部などのような、高級店や予約至難店と食べ手を繋げるマッチングサービスも盛んになっていますよね。
外食賢者たちの
“送り込み”レストラン2019
外食賢者たちが2019年もっとも人にオススメした“送り込み”レストランをご紹介します。
中村さん イチ推し店
【ボッテガ】広尾/イタリアン
【ボッテガ】笹川シェフのスペシャリテ、『トリッパ、ギアラ、小腸の煮込み』
広尾の【ボッテガ】は結構通っていますし、去年はいろんな人にオススメしていたから30人以上はお客を“送り込んだ”と思う(笑)。いつもお任せで頼むのですが、ブッラータやパスタは味のバランスがよくて、また食べにいきたくなる味です。比較的遅い時間まで営業しているし、アットホームでカジュアルにいけるのがいいですね。
小寺さん イチ推し店
【Shira】梅ヶ丘/焼き鳥店
滋賀県淡海地鶏、静岡県天城軍鶏を養鶏場より直送。まずはおまかの『串コース 5本盛り合わせ』1,200円(税込)でスタート
昨年、会うひと会うひとにこのお店の話ばかりしていました(笑)。最初に【Shira】を見つけたとき、おいしすぎてその週に3回通ったほど! ここはダントツにおいしい。結構焼き込むし、昨今小ぶりなお店が多いけれど、ここは大ぶり。でも食べていて辛くない。最初はおまかせ5串でしかオーダーできないのですが、お腹に余裕があったら随時追加できます。
大木さん イチ推し店
【中國菜 四川 雲蓉(ユンロン)】吉祥寺/中華
鶏の胸肉をペースト状になるまで2時間半包丁で叩きまくる、手間暇かかる逸品。成都伝統名菜『雪花鶏淖』(銘柄鶏のふわふわ炒め 金華ハムの香り)3,000円(税抜)。※予約限定
店主のお父さんが経営している印鑑屋の一角を改装し、2018年の暮れ頃にオープンした中華料理店。ネットにも載っていなかった頃に行ってみたんですけど、すごくおいしくて。1週間前に注文しなきゃいけないメニューがあって、それがめちゃくちゃ魅力的。でも来店しないとメニューがわからないから、写真に撮ってコミュニティ内で拡散しあったりするほど。僕にとって2019年のベスト中華です!
いかがでしたでしょうか。2020年もいよいよスタート。こちらの賢者たちの意見を参考に、今年もおいしい料理をたくさん食べていきましょう!
撮影/石井宏明 取材/藤田実子 文・構成/嶋亜希子(ヒトサラ編集部)
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