更新日:2017.05.27食トレンド 旅グルメ 連載
アジア・フーディーズ紀行 vol.10:韓国・ソウル【Mingles】
上海、シンガポール、バンコク、台北、香港……アジアの混沌は、料理においてもモダンを超越するのか? そんな直感を確かめるべく、アジアのガストロノミーを巡ってみました。第10回は韓国ソウルで、韓国料理に新たな風を吹かせる【ミングルズ】です。
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洗練されたプレゼンテーションから始まるコース
魚も肉も柔らかな火入れ。食材そのものの旨みをじっくりと味あわせる
地元の生産者との繋がりを大事にするスタイル
先週の【チョンシク】に次き、今週もソウルから。韓国料理に新風を吹かせるもう一つの代表格【ミングルス】です。
9月には【フロリレージュ】とのコラボディナーを開催するなど、日本のシェフたちとの関係も深く、どちらかと言えば、東アジアのオルタナティヴなグルメシーンを牽引する存在の一つになっていると言っていいでしょう。
2016年のアジア50ベスト・レストランNo.15に初登場
店は、【チョンシク】と同じく、ハイセンスで高級感溢れるエリア・清潭洞(チョンダムドン)に位置。宣陵(ソンルン)通りに面した、ショッピングビルの1階に入っています。
「モダン・コリアン」を標榜するこの店を率いるミングー・カン氏は、聞くところによると、韓国の若手を代表するスターシェフ。アジア50ベスト・レストランでは2016年に初登場で、No.15。とはいえ、韓国国内では既に知られた存在で、評論家などが選ぶランキングでは、常にベスト3に入っています。
簡単にキャリアを振り返ると、スペインの美食都市サン・セバスチャンの3つ星【マルティン・ベラサテギ】で修業し、その後はマイアミやバハマの【NOBU】で研鑽を積んだとされています。
フランス料理の影響を受けたバスク料理と、インターナショナルな日本料理、そして彼の故国である韓国料理をルーツに持つ、ミンガー氏が繰り出す料理とはどんなものなのでしょうか。
洗練されたプレゼンテーションから始まるコース
メニューは基本的にプリフィクスのコースのみ。ディナーは、110,000韓国ウォン(約10,000円)。ランチは、半額の55,000韓国ウォンで、若干省略されたコースが出されているようです。
まずアミューズに三品。最初は『鰻のフリット』。続いて、玉子型の器に入っているのは、『カリフラワーのムース』、山椒がスパイスになっています。
最後の敷き詰められた黒豆に載せられたフルーツ。
プレゼンテーションが、結構オシャレ。こういったインターナショナルな感覚は、ソウルではまだ珍しいかもしれません。
続いて、『秋のサラダ』。
山芋をメインに、ホタテと海老が脇に控えています。酸味の利いたドレッシングをまとっていて、どことなく和食の酢の物の感触も。
そして、『アワビのリゾット』。
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『フォアグラのリゾット』。東アジアなので米料理は必須ですね
韓国料理のコースとしては、やはり米料理は必須でビビンバ的な役割を担っているのでしょうが、出てくる順番が独特です。
和食と同じく、最後の〆的にごはんものが出されるケースが多いと思うのですが、結構早い段階で出てきます。ビビンバ的と書きましたが、むしろイタリア料理のプリモの影響を受けているのかもしれません。
別皿に添えられた、ワカメ風味のクリスピーライスも、リゾットのとろみと対照的で面白く頂けました。
魚も肉も柔らかな火入れ。食材そのものの旨みをじっくりと
次はメインの魚料理の順番でしたが、大喰らいに見えたのか小品をサービスしてくれました。
「日本人の方とのことなのでお口に合うかと思いまして」とサービススタッフ。その『魚の天ぷら』で口休め。
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左:おまけの『魚の天ぷら』。魚醤がコクを出しています
下:『スズキのグリル』。良い食材を選んでいることがわかります
そして、『スズキのグリル』。柔らかい火入れで、丁寧につくられたことがわかる優しい味です。
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左:口直し
下:メインの肉料理は『鴨のグリル』
メインの肉料理は『鴨のグリル』。塩も控えめで、素材そのものの旨みをじっくりと楽しませる方向性です。
地元の食材を理解し、生産者との繋がりを大事にするスタイル
冒頭にも書きましたが、この店を率いるミングー・カン氏は、韓国の若手を代表するスターシェフということだったので、もしかしたらエゴイスティックなくらいグイグイくるタイプかな?とも想定していました。
けれども、その予想を覆すように、自然派な皿が並びます。デザートのクリスピーライスを散りばめたアイスクリームまで、一貫してそうでした。
そんな話をスタッフにしたら、やんわりと「当店のコンセプトは、生産者とのつながりです」と諭してくれました。
地元の素材を活用し、伝統的な韓国料理に西洋料理のエッセンスを盛り込んだフュージョン料理というのが正確な表現でしょうか。
【フロリレージュ】とのコラボレーションも紹介しましたが、川手シェフが指向するところとかなり共通しているようです。日本と韓国という風土の違いは当然ありますが、根底にあるものが通じているのでしょう。
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プティフールは、オーソドックスな西洋風
とはいえ、前回の【チョンシク】のイム・ジョンシク氏にしろ、今回のこの【ミングルス】のミングー・カン氏にしろ、あくまで韓国料理であることにアイデンティティを置いていることが印象的です。
日本のイノベーティブ・シーンがどう自らを位置づけるかを決心できないのと対照的に感じてしまいます(その曖昧さの良さ、メリットもあるのでしょうが)。
その違いが、どんな文化的背景からくるのか、いつか本人たちに聞いてみたいものです。
Mingles
営業時間:ランチ 12:00~13:30 (L.O) ディナー (月~金)18:00~20:30 (L.O) (土)18:00~20:00 (L.O)
定休日:日曜
電話番号:+82 2 515 7306
email:info@restaurant-mingles.com
予約の仕方
予約は1か月前から受け付けています。電話が確実ですが、メールでも可。今のところ、即時予約システムは導入していないようです。
ドレスコードと店の雰囲気
基本的にはカジュアルでOKな雰囲気のお店です。
ただ、ソウルのトップレストランではあるので、記念日などに着飾って食事を楽しむゲストも多くいます。そんな場の雰囲気を壊さないよう、最低限の清潔感は心がけたほうがベターでしょう。
撮影・取材・文/杉浦 裕
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