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更新日:2021.04.22旅グルメ 連載

御殿場【Maison KEI(メゾンケイ)】|~ヒトサラ編集長の編集後記 第30回

さて桜の時期がやってきて、それも今年は開花が早く、3月末はちょうど満開。電車に冷えたシャンパンを持ち込み車窓の桜を肴にアペリティフとします。長閑な日で、電車もガラガラ、ハーフのボトルがなくなったころに富士山が見え、御殿場着です。富士山の大きさに改めて驚きながら、予定通りに「Maison KEI」に到着。お店のまわりの桜も満開です。

メゾンケイ

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御殿場まで足を延ばして

 小林圭さんは、パリでアジア人初のミシュラン3つ星シェフとして話題になりましたが、その小林さんと和菓子屋「とらや」がタッグを組んだ店が御殿場にできるということで、オープン日のランチに伺いました。その名もメゾンケイ【Maison KEI】。
 小林シェフと「とらや」の関係は、「とらや」パリ店に勤務していた現社長との出会いから始まったそうで、気鋭のフレンチシェフと伝統の和菓子店との出会いから10年の時を経て、今の形が出来上がったといいます。

 御殿場なので、都内からちょっと足を延ばすだけで、パリの郊外気分を味わえる気がして、車を走らせました。1時間半ほどのドライブの後、目の前に雪を抱いた雄大な富士山をながめながら小林シェフの料理をいただいた一日は素敵な体験になりました。
「一刻も早くコロナが落ち着いてほしいです。僕はまたパリにもどって自分のレストランを開けなければなりませんが、またすぐ帰国します。ぜひこの空間で料理を楽しんでください」。そう言って小林シェフは、こちらでシェフをつとめる佐藤さんを紹介してくれました。佐藤シェフはパリで小林シェフのもとで働いていた人です。

 場所も料理も素晴らしかったので、今度は花見のころに伺おうとその場で予約。今度は飲みたかったので電車でくることにしました。調べてみると、新宿からふじさん3号という特急に乗ると、12時24分に御殿場駅に着きます。そこからタクシーに乗れば10分ほどで【Maison KEI】。なので、3月終わりの空いている日の12時40分にランチを予約しました。

アペリティフは電車の中で

 さて桜の時期がやってきて、それも今年は開花が早く、3月末はちょうど満開。電車に冷えたシャンパンを持ち込み車窓の桜を肴にアペリティフとします。長閑な日で、電車もガラガラ、ハーフのボトルがなくなったころに富士山が見え、御殿場着です。富士山の大きさに改めて驚きながら、予定通りに【Maison KEI】に到着。お店のまわりの桜も満開です。
 「とらや」とはゆかりの深い内藤廣さん建築のこのメゾンは、さながら郊外の美術館の風情で、ダイニングルームには光があふれています。目の前に富士山を眺められるように席が配置されていて、運がよければ絶景のなかでのランチとなります。

 ランチは4皿(Decouverte出会い)と6皿(Voyage旅)のコースに分かれていて、6皿をいただくことにします。
 場所と料理を考えたら、値段はとてもリーズナブルで、それぞれ3,500円、6,800円。
メインで出てくる鶏料理をLYB豚に変えたら1,400円、和牛に変えたら3,200円が加算されますが、お酒をペアリングでいただいても1人1万円するかしないか。カジュアルラインとはいえ、ミシュラン3つ星シェフが創造する料理をこの環境でこの値段でいただけるなんて、予約が取れないのも頷けますね。

富士を見ながら優雅なランチ

 富士の水で喉を潤し、軽くシャンパンをいただいているとグジェールが出てきます。チーズはコンテで24か月熟成されたものとか。コンテ好きにはたまらないふくよかさ。
 それとマッシュルームのスープには地元のハムが味の深みを与えているようで、シャンパンが一気になくなります。

 そして早くも【Maison KEI】のシグネチャーサラダ『ジャルダン・ドゥ・レギューム・クロッカン(庭園風季節のサラダ)』の登場。ここでは静岡の野菜中心に構成されており、レモンの泡に数種類のソースが実に美しく、テーブルで黒オリーブのグランブルがかけられます。混ぜて食べるのですが、味と彩りと食感のハーモニーの素晴らしさは、この一皿のためだけにここを訪れてもいいと思わせるほどのものだと思います。いきなりメインが来てやられてしまった感じ。

 次のアスパラに合わせてくださいと余市のケルナーが注がれました。
 アスパラはヨーロッパでは春を告げる野菜です。今回は炭火焼にしたものにうるいのソテーが添えられ、アンチョビ入りのヨーグルトソースでいただきます。うるいは日本の春を代表する野菜。早春の苦みを感じる爽やかな日仏コラボの一皿です。

 そして魚料理が出てきました。
 金目鯛のうろこ焼きです。外はパリパリ、中はしっとりの定番に、アラの出汁で取ったエスニックなソースが添えられています。普段魚はサスエ前田魚店からの仕入れで、駿河湾のものを使っているそうで、食材の対応も細かく丁寧に行われているようです。

 霞んだかと思えばまた現れる目の前の富士山は、まだまだ雪に覆われていますが、のどかな風景の中にちらほら見える桜が彩を添え、幸せな眠気が訪れます。

 メインは鶏の胸肉です。通常のコースで出されるもので鶏胸肉の塩麹付けを低温調理したもの。葱とわさびが添えられ、テーブルで塩麹のソースをかけていただきます。
胸肉は雑味を感じない柔らかで綺麗な食感で、お米で育てられた鶏だとか。赤ワインは長野のメルローを合わせてもらいました。

季節ごとに楽しみたい景色とお皿

 まだまだ食べられそうでしたが、デザートの時間になりました。
 ヴァシュランです。実に「とらや」とのコラボらしい作品で、イチゴと白みそのアイスを使い、あんことフランボワーズの羊羹が入っていて、あんこのソースがテーブルでかけられます。崩しながらいただくのですが、渋いお茶があってもいいかと思うような和菓子感が残りました。
 初日に来たときは確か白かったメレンゲが今回は桜色。季節が変わったんですね。

 実は私も35年ほど前にパリに住んでいたことがあり、そのころパリの「とらや」の方にお世話になった記憶があります。それがふとよみがえってきました。日本を代表する老舗和菓子店は、かなり昔からフランスとの交流に力を入れてきていたのです。
 そんな長い歴史のなかから今回、日本人初の3つ星シェフとコラボして素敵なひとつの形が生まれたということでしょうか。

 いろんな可能性を感じました。夜はまた違う顔を見せるのでしょう。ゴルフや温泉帰りに来るのもいいと思います。私は富士を眺めて飲みたいから、次も昼の予約を入れてきました。季節ごとに変わる窓の外の風景とお皿を楽しみたい。ちょっとした別荘気分ですね。
 春の日の豊かな郊外の風景です。

この記事を作った人

小西克博(ヒトサラ編集長)

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